4話 ページ4
.
「なんでそんなに楽しそうなの…」
若葉は、部室棟までの道のりを、鼻歌を鳴らしながら上機嫌で孤爪の隣を歩いていた。
そんな若葉を孤爪が引いた目で少し見上げれば、彼女は小さく首を傾ける。
さらり、と短めの髪が揺れた。
『バレーボール、好きなんだ。だから楽しみなのかな』
「なら、なんで部活入らなかったの」
『秘密〜』
彼女はいつも壁を作る。
それ以上聞いてくることを許さない。そう言うかのように圧をかけてバリアを張る。
今もそうだ。
バレーボールが好きだと言って楽しそうに鼻歌まで歌っているのに、理由は教えてくれない。隠そうとする。
自分には関係ない、と孤爪はエナメルバッグの肩紐をギュッと強く握った。
部室棟のバレーボール部と書かれた部屋を軽く指さし、ここに荷物を置いて更衣するのだと教えた。
とりあえず、孤爪は若葉が肩にかけていたエナメルバッグを預かり中に入る。
見学なので更衣はしなくていいと言えば、若葉はあの笑みを浮かべて頷いた。
孤爪は、若葉の違和感しかない笑顔があまり好きではなかった。
モヤモヤとした気持ちを抱えて着替えを行っていると、外から声が聞こえる。
きっと黒尾と夜久でも来たのだろうと思っていれば、勢いよく中に入って来たのは無駄に身長の高い後輩だった。
「研磨さん！！マネージャーですよ！！」
「知ってるよ。同じクラスだし…」
「そうなんですか！？若葉センパイ、黒尾さん達に誘われたって言ってましたけど」
「おれは誘ってないからね」
相変わらずのフレンドリーさはクラスメイトにも効果があったようだ。
もう名前で呼んでいる。
着替え終わって、外に出れば壁に体を預けていた若葉がスッと体を起こした。
『リエーフ、いい子だね』
「もう仲良くなったんだ」
『あのコミュニケーション能力には誰しも完敗さ。体育館に行くんだよね？』
「…名前で呼んでるの」
『オーケイ、君のことも研磨って呼ぶね』
「そういう意味で聞いたんじゃないんだけど」
こちらも相変わらず飄々としていて掴みどころがない。
孤爪は軽く溜息を吐き、もしも若葉が入部したらの日々を想像して遠い目を向けた。
『私のことも若葉でいいから。名字で呼ばれるの嫌いだし』
作り笑顔じゃない、自嘲したような諦めたような姿が目に映る。
たまにこうやって本音を見せてくれるのは何なんだろう。
孤爪は若葉に興味を抱いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
早夜(プロフ) - LUNAさん» コメントありがとうございます！！楽しんでいただけて嬉しいです。今まさに公開致しました。パスワードなしでご覧いただけます。お待たせしてしまい申し訳ありません。ぜひ、続編も楽しんで読んでいただければ幸いです！！ (2月26日 23時) (
レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
LUNA - こんばんは!!初コメ失礼します!めちゃくちゃ楽しく読ませて頂きました!!続編も気になっているのですが数話公開されたらパスワードがなくても読むことが出来ますか？続編も気になるのでよろしくお願いします!! (2月26日 23時) (レス) id: b20802aba1 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - アマアマハチミツさん» コメントありがとうございます！まだ1話しか書けておらず、数話まとめての公開にしようと思っていたのですが…1話でもいいよ〜と言っていただけるのであれば公開させていただきます。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ミカサさん» 続編公開しますよ！それまでお待ちください！ (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - いくら丸さん» コメントありがとうございます。楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編は公開致しますので少々お待ちくださいませ。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：早夜 | 作成日時：2023年12月12日 0時
