29話 ページ29
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『わかりましたよ、一回だけですから』
「よっしゃ！ありがとな、若葉ちゃん」
約10cm程低い頭が若葉を見上げて笑った。
そんな笑顔でお礼を言われたら若葉も断れない。
NEKOMAと背中に書かれてある赤い上着を脱ぎ、体育館の壁際に置いた。
黒いTシャツから伸びる腕は白い。
屋内競技だからとは言え、少し病弱に見える程の白さだ。
体育館専用シューズとして着用していた選手時代のバレーシューズを床に擦り付け、キュッキュッと音を鳴らす。
ボールを持ってエンドラインより後ろに立った若葉がネットの向こうを見据えた先に、目をギラギラとさせて構える夜久の姿があった。
『いきまーす』
そう言って若葉が宙にボールを放り投げる。
助走をつけて、高く飛んだ。
容赦なく左腕を振るった先で、ボールはバチッと音を立てて勢いよく放たれる。
ボールがコートに一直線で向かうその途中。
夜久が両腕を構えて、捉えていた。
伸ばした腕にドッ、と当たったボールはそのまま回転して後ろへ飛んで行く。
夜久はそのボールを目で追ったあと、呆然としたまま若葉に視線を向けた。
これがウシワカと同じサウスポーのサーブ。
女子バレー選手で取れる人はいないだろう。否、男子バレー選手ですら取れないかもしれない。
だって、夜久が取れないのだから。
『すみません、打つ時ちょっとタイミング悪かったので多分アウトです』
そう言って首に手を当てながら、立ち尽くす夜久の側に近寄る若葉にグッと身を寄せた。
夜久は跳ね返ったボールを片手に、真剣な眼差しで若葉を見上げる。
「若葉ちゃん」
『嫌です』
「まだ何も言ってないだろ」
『嫌です』
「若葉ちゃんもサーブ打ってる時楽しかっただろ？もう一回打ってくれよ、な？」
『嫌だ』
頼む嫌だお願い嫌だもう一回くらい嫌だ、と繰り返す夜久と若葉の姿を、自主練習をするためにやって来た黒尾が呆然と見つめていた。
身長差もあって、まるで姉と弟の会話のような光景。
黒尾はコホン、と咳払いをした。
二人同時に顔を向けた先にいた黒尾は気まずそうにしながら「姉弟喧嘩はほどほどに、な」と言えば、夜久がズンズンと黒尾の方へと突き進んで行く。
「きょうだいって、俺が弟じゃないだろうな！？」
『合ってると思いますよ。私の方が身長高いですし』
「オイ若葉ちゃん！！」
「やっくんイタイ！！足踏んでる！！」
「わざとに決まってんだろ！！」
痛さで涙目になった黒尾に向かって両手を合わせれば黒尾が「若葉！」と叫んだ。
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早夜(プロフ) - LUNAさん» コメントありがとうございます！！楽しんでいただけて嬉しいです。今まさに公開致しました。パスワードなしでご覧いただけます。お待たせしてしまい申し訳ありません。ぜひ、続編も楽しんで読んでいただければ幸いです！！ (2月26日 23時) (
レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
LUNA - こんばんは!!初コメ失礼します!めちゃくちゃ楽しく読ませて頂きました!!続編も気になっているのですが数話公開されたらパスワードがなくても読むことが出来ますか？続編も気になるのでよろしくお願いします!! (2月26日 23時) (レス) id: b20802aba1 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - アマアマハチミツさん» コメントありがとうございます！まだ1話しか書けておらず、数話まとめての公開にしようと思っていたのですが…1話でもいいよ〜と言っていただけるのであれば公開させていただきます。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ミカサさん» 続編公開しますよ！それまでお待ちください！ (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - いくら丸さん» コメントありがとうございます。楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編は公開致しますので少々お待ちくださいませ。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早夜 | 作成日時：2023年12月12日 0時
