93話 ページ46
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第3セット目。
第2セット目と同じく、烏野は白鳥沢に食らいついて行っている。
白鳥沢がセットポイントの中、セッターはあの人にあげた。
空中の姿勢。
弓のように曲がった体。
あぁ、なんて美しいのだろうか。
そうだ。憧れたのはこの姿だった。
高さとパワーで捩じ伏せる、あの強さに憧れた。
「若葉ちゃんはさ、なんでバレー始めたの？バスケとか他にもあったわけじゃん」
及川の問いに、若葉は目を伏せた。
金茶色の瞳に睫毛の影を落とす。
若葉は言った。
『知りたかったんです、兄が夢中になるバレーボールのことを。楽しいと言ったから、知りたかった。私もバレーボールをすればわかるんじゃないかって』
「てっきりウシワカちゃんに憧れて〜って感じかと思ってた」
『昔の私は、兄さんがこの世で一番大好きだったんですよ』
大好き。
その言葉に及川の顔が見たこともないくらい歪む。
まるで同担拒否のように、自分が嫌いな奴は他の人も嫌ってないと嫌だ、みたいな。
その表情のまま、及川は「それで？」と言った。
『私、バレーボール以外は全て兄より優れていたんです。私が兄の手を引っ張って行くことが多かった。兄さんには私がいないとダメなんだって勝手にそう思ってた』
けど、バレーボールだけは違った。
バレーボールでは背中を見せる人だった。
若葉がいなくともコミュニケーションが取れていたし、いや、取れていなくともその背中で皆が着いていく。
自分が引っ張らなくてもやっていける。
それどころか、若葉の方が置いていかれた。
悔しくて、悲しくて、絶望して。
本当は周りなんてどうでも良かった。
ただ先を行く兄に認められたくて。
ただ兄の手をもう一度繋ぎたくて。
でも、兄はバレーにおいては天才の立ち位置だった。
天才だから。自分とは違うから。
そう言い聞かせる度に苛立ちが募っていった。
周りが言うウシワカの妹という言葉にも反応して、兄を遠ざけて。
「…ハンカチなら貸せるけど」
『私っ、酷いこと言ったんです。天才に私の努力なんかわかるわけないって。兄さんだって努力してるの知ってる。だから、あんなに綺麗なフォームで飛んでいられる。なのに、私はっ』
ウシワカと同じ瞳から一筋、涙が零れ落ちた。
及川は不謹慎だとわかっていても思わずにはいられなかった。
涙って綺麗なのだな、と。
若葉の隣に腰を下ろし、及川は若葉の目元にハンカチを押し当てた。
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早夜(プロフ) - ナノハナさん» ありがとうございます！ぜひ追ってください…！あれ51話が2つありますね？？修正します！教えて下さりサンキューです！ (2月28日 15時) (
レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - 続編ありがとうございます！！！！ずっと追わせていただきます！！！…51話が２つある事が気になっているんですが… (2月28日 15時) (レス) id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - 冴凪りつさん» ありがとうございます！ちょっと入れるはずのなかった話を入れてしまい、代表決定戦まで入るか心配になってきております。更新頑張りますね！楽しみにしていて下さい！！ (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ふみさん» お待たせしてすみません！ガンガン更新する予定ですので楽しみに待っていただけると嬉しいです！ (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
冴凪りつ(プロフ) - 続編待ってました!!これからの展開すごく気になります!!更新楽しみに待ってます！ (2月27日 21時) (レス) id: c52178a352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早夜 | 作成日時：2024年2月26日 14時
