88話 ページ41
.
10月26日。
授業が終わり、制服から部活着に着替えていた時のことだった。
集合まで時間があるのを見て孤爪がスマホを触っていると、急に声をあげた。
「…翔陽達、決勝進出だって」
月バリを捲っていた若葉の手がピタリと止まる。
「マジすかっ」
「やるなぁ…！」
「さすがだ」
喜ぶリエーフに驚く夜久、感心する海。
若葉は何も言わない。
口を噤んでいる。
「んで、これからウシワカと戦んのか。かーわいそー」
椅子に座って靴下を履きながら言った黒尾は手が止まっている若葉をちらりと見やる。
「……見に行ってやれよ。お兄サンの最後の試合になるかもよ？」
『なんで私が兄さんの試合なんか。行く理由もありません』
ふいっと顔を背ける若葉に黒尾は苦笑した。
相変わらずだ、と。
だがしかし、若葉の言葉に夜久が目を釣りあげた。
「何言ってんだよ！妹が兄の試合見に行くのに理由なんかいるか！！」
「ヒュー、やっくんカッコイイこと言うねェ」
「もしかしたら最後かもしれないしね。部活のことは気にしなくていいよ」
『いや、気にしますよ』
せっかくの夜久のカッコイイ台詞も黒尾に茶化され台無しである。
若葉は呆れたように三年に視線を向けた。
すると、孤爪が小さな声で「明日は午前練だよ」と呟いた。
「おーい研磨ァ、休みだけはしっかり覚えてやがって」
「午後から体育館の点検だったか？ちょうどいいじゃん！」
「午前だけならマネージャーいなくても何とかなるしね」
「マネのいない時期が長かったおかげで俺らマネ業知ってっから安心して行ってこい」
自分たちが三年生でもあり、負けたら終わりなのだと、ここにいる誰よりも理解しているがために、若葉に見にいけと言っているのだ。
山本が「こっちも負けてらんねぇぜぇぇ！！」と叫ぶ横を若葉は通り過ぎていく。
「山本うるさい。近所迷惑」
翌朝。
「なあ、若葉ちゃん行ったと思うか？」
「あれだけ言ったら流石に若葉も行ってるだろ」
夜久と黒尾はそう言うが、孤爪は嫌な予感で胸がいっぱいだ。
ガラガラ、と部室の扉が開き『おはようございます』と高い声が聞こえる。
ん？高い声？
夜久と黒尾はバッと勢いよく振り向いた。
扉の前に立つのはウシワカに似た容姿で、高身長の女子。
「なんっで来てんだ！？」
『来たらダメなんですか』
「いや、見に行ってると思ってたわ！！今から行け、今すぐにでも行け！！」
『何時間かかると思ってんですか』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1380人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
早夜(プロフ) - ナノハナさん» ありがとうございます！ぜひ追ってください…！あれ51話が2つありますね？？修正します！教えて下さりサンキューです！ (2月28日 15時) (
レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - 続編ありがとうございます！！！！ずっと追わせていただきます！！！…51話が２つある事が気になっているんですが… (2月28日 15時) (レス) id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - 冴凪りつさん» ありがとうございます！ちょっと入れるはずのなかった話を入れてしまい、代表決定戦まで入るか心配になってきております。更新頑張りますね！楽しみにしていて下さい！！ (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ふみさん» お待たせしてすみません！ガンガン更新する予定ですので楽しみに待っていただけると嬉しいです！ (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
冴凪りつ(プロフ) - 続編待ってました!!これからの展開すごく気になります!!更新楽しみに待ってます！ (2月27日 21時) (レス) id: c52178a352 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：早夜 | 作成日時：2024年2月26日 14時
