84話 ページ37
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『だんだんと兄がたくさんの人に賞賛されるようになって、私にも目を向けられた。期待されて最初は嬉しかったけど、兄の方が試合も出てて、上手かったから私はどんどん比べられていった………それからです。仲が拗れてしまって、もう戻れなくなった』
未練がましく写真なんか飾ってるんですけど、と若葉は自嘲気味に言った。
夜久は黙ったままだった。
若葉の方を振り向いたかと思えば、いきなり両肩を押してベッドに横たわらせた。
「いいから寝ろ。今日はしっかり寝て、明日も休め。熱中症は一度なったらなりやすいんだからな!」
『話が突飛してよくわかりません』
「ウシワカの話は後でも聞いてやるから。俺は写真の若葉ちゃんよりも目の前の若葉ちゃんの体調を気にしてるんです。ほら、寝ろ。寝るまで帰んないからな」
『絶対鍵返してくださいよ…』
「また見に来るから安心して寝ろ〜。最近、よく動いてたから疲れたんだろ」
持ってきていた予備の冷えピタを若葉の額に貼り、布団を上まであげた。
ポンッと布団の上から軽く叩き、夜久は笑った。
頭を撫でてやれば猫のように目を細める。
そして、若葉の目が閉じるまで夜久はそばを離れなかった。
瞼の裏から眩しいと感じて目を開ける。
窓からオレンジの光が差し込んでいた。
ジャージのまま寝てしまっていたことに気づき、近くに置いてあった黒いTシャツと紫のハーフスボンを履いて自室から出た。
キッチンに立ち、お茶を飲んでいればインターホンが響く。
額の冷えピタを剥がし、ゴミ箱に捨てながら玄関へと向かう。
玄関を恐る恐る開くと、夜久と黒尾、それからレギュラーメンバーがいた。
「こいつらも行くって聞かなくてさー。ま、お邪魔します」
『いいですけど、こんなに大男がいたら狭いですよ』
「大男って言い方よ」
黒尾は苦笑した。
元気よく中へと入るリエーフに続いて黒尾も中へとお邪魔する。
『こんなに大人数来るとか思ってなかったんですけど…コップ足りないし…あ、マレーシアのお菓子入りますか?私、あまり好きではなかったのであげます』
「いらないもの押し付けんな。ほら、若葉はゼリーでも食べてなさい」
『ありがとう、お母さん』
「…最近それハマってんの??」
「クロから始めたんでしょ」
研磨が呆れた顔をして、テーブルにばら撒かれたマンゴーグミの包装を破って口に入れた。
眉がギュッと寄ったのを見て若葉は思った。
自分と同じで、好ましくなかったのだな、と。
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早夜(プロフ) - ナノハナさん» ありがとうございます!ぜひ追ってください…!あれ51話が2つありますね??修正します!教えて下さりサンキューです! (2月28日 15時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - 続編ありがとうございます!!!!ずっと追わせていただきます!!!…51話が2つある事が気になっているんですが… (2月28日 15時) (レス) id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - 冴凪りつさん» ありがとうございます!ちょっと入れるはずのなかった話を入れてしまい、代表決定戦まで入るか心配になってきております。更新頑張りますね!楽しみにしていて下さい!! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ふみさん» お待たせしてすみません!ガンガン更新する予定ですので楽しみに待っていただけると嬉しいです! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
冴凪りつ(プロフ) - 続編待ってました!!これからの展開すごく気になります!!更新楽しみに待ってます! (2月27日 21時) (レス) id: c52178a352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早夜 | 作成日時:2024年2月26日 14時