83話 ページ36
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練習練習練習。
合宿が終わって一日練が続く中、水分補給をしっかりしなければならない。
選手たちに呼びかける若葉本人があまり水分補給をしておらず、とある日のことだった。ついにぶっ倒れた。
選手たちは普段しっかりしている若葉がまさか倒れるとは思わず、酷く慌てた。
一旦、練習を中断し、氷やら水やら持ってきて多分熱中症であろう若葉を冷やすことにした。
扇風機で風を送り、額には冷えピタ。
目を開けた若葉はゆっくりと体を起こした。
「大丈夫か?人には水分補給しろって言って自分がしてなきゃ意味ないだろー」
『…すみませんでした。大事をとって今日は家に帰らせていただきます』
「そうしろ。一人で帰れるか?」
『帰れま』
「そういや、叔母さんが海外にいるんだったよな。俺はここを離れらんねーから…やっくん!若葉のこと送ってやって!」
淡々と事が進んでいく。
いつの間にか若葉の荷物はまとめられ、若葉のカバンは夜久が背負い、若葉は体育館を後にした。
「体調悪いなら悪いって言え。倒れられた方が困るわ」
『すみません。悪いって気づかなくて』
「もっと悪い」
喋りながら歩いていると瞬間で家についた。
ボロアパートと若葉が称したが、ボロとまではいかないけれどそこそこに古い建物だった。
階段を上がった奥の部屋。
このアパートは階に二部屋の四部屋しかなく、こじんまりとした印象である。
玄関扉を開けて中に入る若葉に続いて、夜久はお邪魔した。
リビングにあった奥の扉を横に引き、中へと入る若葉の背を慌てて追いかける。
白と黒で統一された部屋。
チェックのカーテンにチェックの布団。
黒いベッドに白い机。
唯一色があったのは壁にかけられた白鳥沢と書かれた紫のジャージだ。
「意外と片付いてんな」
『昨日片付けたばかりなので。カバン、そこに置いてください』
黒い棚の前に置けと指示が入ったので、夜久は肩からカバンを下ろした。
そして、ふと棚に飾ってあった写真立てに目が入る。
そこに写っていたのは牛島兄妹だった。
中学の入学式だろうか。
白いブレザーの制服の胸ポケットにピンクの花が刺さっており、少しオーバーサイズのようだった。
着慣れた様子のウシワカと、幼い面影がある若葉。
バレーボールを手に、笑って並んで写っていた。
『その頃はまだ仲良かったんですよ。こじれたのは中二からです』
「うぉっ、ごめん、勝手に見た…」
『いいですよ』
若葉はベッドに腰かけながらそう言った。
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早夜(プロフ) - ナノハナさん» ありがとうございます!ぜひ追ってください…!あれ51話が2つありますね??修正します!教えて下さりサンキューです! (2月28日 15時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - 続編ありがとうございます!!!!ずっと追わせていただきます!!!…51話が2つある事が気になっているんですが… (2月28日 15時) (レス) id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - 冴凪りつさん» ありがとうございます!ちょっと入れるはずのなかった話を入れてしまい、代表決定戦まで入るか心配になってきております。更新頑張りますね!楽しみにしていて下さい!! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ふみさん» お待たせしてすみません!ガンガン更新する予定ですので楽しみに待っていただけると嬉しいです! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
冴凪りつ(プロフ) - 続編待ってました!!これからの展開すごく気になります!!更新楽しみに待ってます! (2月27日 21時) (レス) id: c52178a352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早夜 | 作成日時:2024年2月26日 14時