80話 ページ33
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まさに絶対零度の視線。
背筋が凍る。
孤爪は若葉の腕を軽く引いて落ち着くように言うが、若葉はその手を優しくはがす。
「…全国三大エースですよ?凄いじゃないですか。そんな人が若葉センパイのお兄さんなんでしょ?俺だったら自慢しますよ」
恐る恐る若葉を見ながらリエーフが言った。
若葉のこめかみにピキッと筋が入る。
口を開いた瞬間、黒尾の大きな手が若葉の口を封じ、もう片方の手でリエーフの頭を叩いた。
「リエーフ!!言っていいことかちゃんと考えろ!!ごめんな、若葉。さっき五大エースの話になって話したからリエーフも気になったんだと思う」
『……ついカッとなりました。頭冷やしてきます』
「ちょ、オイ!!若葉!!」
黒尾の阻む手を振り切り、若葉は顔を俯かせてその場を去った。
リエーフに孤爪の視線が突き刺さる。
黒尾はやってしまったと首の後ろに手を当てた。
「リエーフ。この際だから言っとくが、若葉はウシワカのことが嫌いだ。自慢なんてもんじゃねェ」
「俺、めちゃくちゃダメなこと言っちゃいましたよ!?」
「だから怒ってたろーが。あぁ、俺達の努力が水の泡だ」
「何かしてたんですか?」
「ウシワカのことになるとああなるのがわかってっから話題を避けてたんだ。どーする、若葉が部活に来てくれなくなったら」
黒尾の言葉に唖然と口を開くリエーフ。
若葉が部活に来なくなる?そんなの、ダメだ。
ハッとした時、孤爪が腰を上げた。
「おれ、若葉と話してくる」
「お前が?こういう時いつもめんどくさがるじゃねーか」
驚いたように目をぱちぱちと瞬かせる黒尾をちらりと見やり、孤爪は言った。
「若葉をマネージャーにしたの、おれだから」
踵を返し、若葉が早足で去っていった方へゆっくりと足を踏み出した。
マネージャー達が集まるところにも、影山のところにも、夜久のところにもいない。
一体どこに行ったのだろうかと、孤爪は考えた。
そして、靴を脱いで体育館の中へと踏み入れる。
やはり、いた。
ステージ上から足を垂らし、上半身は寝転がっていて見えない。
ゆっくりと近づいた孤爪は「若葉」と声をかけた。
「大丈夫?」
『大丈夫に見える?』
「見えないから聞いてるんだよ」
『ほっといて。そのうち戻るから』
孤爪はステージの壁に背を預けて寄りかかった。
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早夜(プロフ) - ナノハナさん» ありがとうございます!ぜひ追ってください…!あれ51話が2つありますね??修正します!教えて下さりサンキューです! (2月28日 15時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - 続編ありがとうございます!!!!ずっと追わせていただきます!!!…51話が2つある事が気になっているんですが… (2月28日 15時) (レス) id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - 冴凪りつさん» ありがとうございます!ちょっと入れるはずのなかった話を入れてしまい、代表決定戦まで入るか心配になってきております。更新頑張りますね!楽しみにしていて下さい!! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ふみさん» お待たせしてすみません!ガンガン更新する予定ですので楽しみに待っていただけると嬉しいです! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
冴凪りつ(プロフ) - 続編待ってました!!これからの展開すごく気になります!!更新楽しみに待ってます! (2月27日 21時) (レス) id: c52178a352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早夜 | 作成日時:2024年2月26日 14時