74話 ページ27
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木兎は周りに支えられてエースの力を最大限発揮しているのだと若葉は思っている。
実際、そろそろ打ちたくてウズウズし始めた木兎に赤葦がトスを上げた。
オイシイところはエースに託す。
木兎は助走をつけて飛び、強打を繰り出した。
何ていう威力なのだろうか。
若葉は目の前の試合に視線を戻した。
点数が変わり、スコアブックに書き込む。
夜久が綺麗にボールを拾い、孤爪へと返す。
その様子を見ていた芝山が若葉に「あの、」と声をかけた。
『何か気になることでもあった?』
「僕も、夜久さんみたいに拾えるようになれますか…?」
『それは芝山の努力次第じゃない?』
「ゔ…」
守りの音駒の守備専門であるリベロ。
夜久が引退したあと、そこに入るのは芝山になる。
不安なのだろう。
若葉は顔を上げて芝山の目を見つめた。
『でも、心配はしてないよ』
薄ら微笑んだその表情、光に反射した金茶の瞳。
芝山はぶわっと感情が昂った。
マネージャーとしても元選手としても一目置いている先輩からそんなことを言われたら誰でも嬉しいだろう。
今の芝山はそれだ。
嬉しくて舞踊ってしまいそうなほど。
いくらでも頑張れる言葉。
膝の上に頬杖をつき、試合を眺める若葉の後ろ姿を芝山は見つめた。
リエーフが上手くブロックができた時、山本がストレートが決まった時、福永がフォローした時、どの瞬間でも若葉は楽しそうに試合を見ていた。
本当にバレーボールが好きなのだと芝山は口元を緩めた。
音駒と森然の試合は音駒が勝ち、森然はフライングを行っていた。
「ブロッコリーが床を滑っている」
「誰がブロッコリーだ!!トサカヤロー!!」
「誰がトサカだ!これは寝癖ですぅ!!」
主将同士の醜い争いに呆れた視線を送りながら若葉は孤爪に話しかけた。
『黒尾先輩のあの髪、寝癖なんだ』
「…枕を挟んで寝てるからね」
『何で枕ふたつも持ってるの??』
「ふたつ無いと寝れないらしいよ。変だよね」
『変だね』
二人揃って頷き、黒尾の頭に視線が集まる。
若葉達の会話を聞いていた黒尾がビシィィッと指さしながら叫んだ。
「枕が2つあったら安心して寝れるでしょーが!!そういう体質なんですぅ!!お二人にはないんですかァァ!?」
「ないよ、そんなの」
『ないです。枕無くても寝れますし』
「お前らとは分かり合えないわ」
口をひん曲げて見下ろされた。
そんな態度をされるとは思いもしなくて、若葉は孤爪となんとも言えない顔で黒尾を見上げ、そそくさとその場を去ったのであった。
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早夜(プロフ) - ナノハナさん» ありがとうございます!ぜひ追ってください…!あれ51話が2つありますね??修正します!教えて下さりサンキューです! (2月28日 15時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - 続編ありがとうございます!!!!ずっと追わせていただきます!!!…51話が2つある事が気になっているんですが… (2月28日 15時) (レス) id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - 冴凪りつさん» ありがとうございます!ちょっと入れるはずのなかった話を入れてしまい、代表決定戦まで入るか心配になってきております。更新頑張りますね!楽しみにしていて下さい!! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ふみさん» お待たせしてすみません!ガンガン更新する予定ですので楽しみに待っていただけると嬉しいです! (2月27日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
冴凪りつ(プロフ) - 続編待ってました!!これからの展開すごく気になります!!更新楽しみに待ってます! (2月27日 21時) (レス) id: c52178a352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早夜 | 作成日時:2024年2月26日 14時