握手 ページ4
:
授業がないのに大学に行って、あさみの店に入り浸る歩。
あさみは笑って「瞬もよく居るから」と入り浸りの許可をくれた。
『泊めてくださって、ありがとうございました』
「いえいえ。そういえば、歩ちゃんはどこ出身なの？」
『ボクは東京生まれ東京育ちですよ』
「なら実家の方が近かったんじゃない？」
その言葉に歩は顔を暗くした。
あさみは悟る。
「(これは聞いちゃいけなかった…！)」
慌てて「で、でも歩ちゃん居て楽しかったなぁ。そうだ、これ試作なんだけど飲んでみない？」と違う話題を持ち出した。
歩もその言葉に頷いて『いただきます』とストローを咥える。
青ざめた顔で飲む彼女の思いとは……。
『(高そうな壺割って家出してるなんて言ったら絶対笑われる)』
所詮こんなものである。
ちょうどその時、お店の扉が開いた。
ピーク時間よりも少し早い来客。
気になって扉に注目していると、赤髪の人が「おはようございます」と挨拶して入ってくる。
『バイト？』
「そうなの。蒼真くん、この子颯くんの友達」
「颯くんの？こんにちわー、四季蒼真です」
ニコリと笑いながら右手を差し出した。
その手を見て
『初めまして、六里歩です。よろしくね〜』
と左手を差し出した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
『あ、右手か。間違えた。ごめんね』
「ﾌﾞﾌｯ」
改めて右手で差し出された手と握手をした瞬間、蒼真は吹き出し、顔を逸らして震えている。
『え、蒼真笑ってんの？』
「だ、だって、まさか右手と左手で握手しようとするなんて」
言いながら1人でツボっている。
『お気に召されたようで嬉しい限りだよ。ほら、仕事しなくていーのー？』
「あ、忘れてた」
『ははっ』
パタパタと駆けていく背を見送り、カウンターテーブルに肘をつき、あさみと顔を見合わせる。
『類は友を呼ぶってまさにこのことですね』
「そうねぇ、瞬も抜けてるところあるし」
『ボク、小さい頃は父がつきまとってましたよ。よく怪我するしボーッとしてるからって』
「そうそう、だから絆創膏は欠かせなかったわー」
「(あれ、父親とは良好………？)」
思わず2度見してしまう。
ちょうどその時、試作ドリンクを飲もうとして、ストローを空振った歩をあさみは目撃してしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
早夜(プロフ) - ぽすとさん» ありがとうございます。亀更新だとは思いますが頑張ります！ (2022年12月28日 12時) (
レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすと - 文字の色とかフォントとか工夫しててとてもいいです！！お話も面白いし…。これからも頑張ってください！ (2022年12月25日 22時) (レス) @page3 id: 8a2886ac53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：早夜 | 作成日時：2022年11月21日 7時
