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旅人は彼女になんと言えば良いのか考えていた。
必死に脳を回転させていく。
「つまり…お前は自分の両親を疑うのか？」
「は？」
自分よりも先にパイモンが言葉を発する。
何を言っているんだ、という顔をされる。パイモンを、旅人はじっと見る。
「だって、お前のことを大切に育ててくれた両親を疑うことだろ？彩葉が斉藤家の子じゃないと疑うってことは。違うのか？」
パイモンの言葉に悪意などない。ただ自然に思ったことなのだ。
自分の気になったことを直ぐ言うのがパイモンだから。
パイモンの言葉を聞いて青ざめる妹。
「確かに。つまり、貴方の母親が不倫してたと言いたいの？」
「ち、違う…私は……。」
彼女の目が泳ぐ。そして、走って逃げる。
(逃げた。)
取り巻きの子達も後を追う。
しかし、一人だけ残ったものがいた。
いかにも大人しそうな子である。明らかに、彼女の取り巻きとしては場違いの子だ。
モゾモゾしながら、旅人と目を合わせる。
「杏ちゃんは、お姉さんから神里様を奪いたいだけだと思います。」
「なんでそんなこと話してくれるんだ？」
「杏ちゃんの事、あんま好きじゃないんです。」
そりゃぁそうであろう。全く気が合わなさそうな雰囲気である。
「おそらくですが、お姉さんが結婚しないのはお互いが後継ぎ同士だからだと思います。」
「そういえば、斉藤家は彩葉とあの妹だけみたいだしな。綾人も長男…。あれ？斉藤家はどうなるんだ？」
「そうなんです。もしかしたら、お姉さんは時が来たら…婚約破棄でもするつもりだと思います。」
「そんな！」
この少女の考えは当たっていた。
しかし、それが当たっていると知っているのは彩葉のみだ。
旅人は悩んだ。
出来ることなら、綾人を好きな人と結ばせたいという気持ちがあるからだ。
「すみません、私はこれで。杏ちゃんに追いつけなくなるので。」
少女は足早に去っていった。
「なんで彩葉の両親は綾人と婚約なんてさせたんだ？」
「確かに……。全く意図がわからない。」
亡くなった人間がなにを考えていたのかなんてわからない。
旅人は、桜の蕾を見つめた。
(お節介…すぎるのかな。いいや、でも気になるから。)
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作者名：ふく | 作成日時：2022年10月14日 19時
