氷の剣士は散る ページ24
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遂にやってきた桜雷武闘会当日。
鎖国令が解除された事により、他国の強者が集まっていた。
「こんにちは、彩葉さん」
「綾華さん。本日はよろしくお願いします」
綾華がトーマを連れて、彩葉の元へ挨拶へと来た。
しかし、そこに綾人の姿はなかった。
この武闘会の準備をしたのは綾人なのに。
だが、彩葉にそんな事を気にしている暇などいなかった。
「すみません、そろそろ始まりますので」
「はい。彩葉さんのお言葉、楽しみにしていますね」
彩葉は開会の言葉を言うために民衆の前に立つ。
「こんにちは、斉藤彩葉です。今日という日に相応しい天気となりました。鎖国令も解除され、各国からの強者の方々が集まったのを見て、私はとても楽しみで仕方ありません。正々堂々、己の力を出し切ってください。これより、桜雷武闘会を開始いたします!」
大きな歓声が上がる。
彩葉は一礼をし、裏へ戻っていく。
「ほんとに彩葉さん綺麗だな……」
「話によると、神里様と婚約を解消したらしいぞ」
「それで今回の武闘会の優勝者が彼女の婚約者になるんだってよ」
「え?!玉の輿か……?」
出場者たちにもその噂は回っているようで。
しかし、彩葉にとってそれは関係なかった。
それは自分が優勝するから。
彼女は神子から貰った薬を飲み、姿を変える。
黒髪に黒色の瞳。彼女のコンプレックスであった、口上のホクロも消えていた。
(これで口元を隠さなくて良い……)
本人は少しだけ、良いな、と思った。
彼女は陽の下を歩く。
司会進行は神里家の家臣の一人が行う。
彩葉の出番がやってくる。
「か弱そうな女だな……」
そう言われても、彼女は表情一つ変えない。
今の彼女は、皆が口を揃えて言う氷の剣士なのだ。
「始め!!」
冷たい空気が流れる。
男の刀が宙を舞い、地面にグサリと刺さる。
そっと、彩葉は刀を鞘にしまった。
観客から歓声が上がる。
「勝者!“碓氷”選手!」
碓氷は彩葉が偽って登録した名前だ。
彼女は、何がなんでも優勝する気なのだ。
(私は、あいつらの思い通りにはさせない…)
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作者名:ふく | 作成日時:2022年10月14日 19時