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○●○



何故私は神里様と、ピクニックらしきものをしているのだろうか。

元々は桜雷武道会の最終的な話し合いのはずだったのだ。

それなのに、彼が「外の空気でも吸いませんか」と私を半ば強引に外に連れ出した。

そしたらこれだ。

陽光の元。敷物を敷いて、二人で座っている。

非常に気まずい。



「あの」

「何故連れ出したのか、と訊きたいのでしょう?」

「…」



訊きたいことが分かっているのなら、さっさと理由を教えてほしい。

桜雷武道会までそんなに時間はないのだから。



「羽を休めた方が良いのではないかと思ったのです。最近、とても忙しそうにしてますし。……私に、何か力になれることはありませんか」



確かに忙しい。

鎖国が解除されて、出場者が増えた。

他にも、あの家にいるだけで…私は心が疲れる。

そういえば、忙しすぎて平蔵から話を聞けていないな。

案外早く調べ終わるとは……

とりあえず、適当にこの人をあしらわなければ



「別に…大した事ではありません。貴方様のお手を煩わせる訳には……」

「私の事、嫌いですか?」



またその質問だ。真剣な目で見られるから、反応に困る。



「嫌いではありません」

「では質問を変えます。私の事、好きですか?」



その質問を聞いた途端、私は言葉に詰まった。

しばらくの沈黙が流れる。

……私は、その質問の答えを言えない。

分からないからだ。



「すみません、答えにくい質問でしたね。……そういえば、トーマに料理を作らせたんです。いかがですか」



私がいただくと言う前に用意するのやめてもらえますか。

お重箱の中身は、いなり寿司だった。

何故いなり寿司……



「まぁ、せっかくだしいただきます」



私が一つ頂こうとした時。

鼻につく声がした



「あらお姉様、こんなところで何を?」

「杏……」

「まぁ、美味しそうないなり寿司ですね。妖狐のお姉様にピッタリですわね。大好きですもんね、いなり寿司」



だから苦手なんだ。

いなり寿司が。




「っ……」



違う、私は人間だ。

私は…




「彩葉……!」



逃げ出した。


私は臆病者だから。


なんで、涙なんか…出るんだろ……


私は、私は…


人間じゃ駄目なの?



○●○

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作者名:ふく | 作成日時:2022年10月14日 19時

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