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「また何かあったら連絡しますね。」
「分かりました。……唐突に来るのだけはやめてください。」
玄関先で会話をする二人。
彩葉はさっさと綾人に帰ってもらいたいようだった。
「あ、そうだ。綾華が貴方に会いたがっていました。」
「綾華さんが?」
意外そうな顔をする。
驚いているのであろう。まさか、自分に会いたいなどと言われ。
彩葉は少し考え、彼に言った。
「時間が作れるように、善処は致します。」
「ふふ、それではまた。」
「詩音、門までお見送りを。」
彼がこの家を去っていった。
力が抜けたのか、溜め息をついて崩れる彩葉。
(やっぱり、疲れる……)
相手は社奉行の神里家の当主。偉い人間と接するのは疲れるのだろう。
彩葉はゆっくりと立ち上がり、執務室へと戻っていった。
「紫苑、斉藤家の状況は?」
「頑張ってお嬢様が立て直していますが…このままでは落ちるでしょう。」
「そうですか。急がねばなりませんね。引き続きよろしくお願いしますよ、紫苑。」
「御意。」
綾人は門を出て、斉藤家を去っていった。
(お嬢様が婚約解消しようとしていることはまだ黙っておこう。)
詩音はくるりと振り向き、家へと入る。
そして、昼食の準備へと取り掛かる。
(……お嬢様は、本当に斉藤家の子供なのだろうか。)
綾人に話すべきか悩んだ内容を整理する。
綾人に言えば調べられた事。
(明らかに似ていない。だが、そうと裏付ける証拠もない。)
手を動かしながら、頭を回転させていく。
(私は、お嬢様と似ている方を見た。)
ふつふつと、鍋が沸騰する。
(赤い瞳、わずかに入っている赤色の髪。色自体は違うが似ている、髪色。)
だが、そうなると…何故彼女が斉藤家に養女として来たのか分からない。
奥様と、旦那様に彼の親戚など……
これは、調べる必要がある。
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作者名:ふく | 作成日時:2022年10月14日 19時