ー ページ32
画面越しに見かける結城の姿とは一味違うものが撮れたと心踊ったのも束の間、バレーシューズを履いてロッカーから出てきた彼女は既にいつもの彼女だった。
『いつ見てもAのトスは羽が生えているようだ！』
『Aのブロック！これは珍しい！
うん、自分でも驚いた顔してるね笑。』
『あぁ、今のは完全に読まれてた。
視線フェイントが甘いと逆に悪手だ。』
イタリアの実況でも彼女の名前が何度も飛び交う様は、見ているこちらも何故か誇らしくなる程だ。
試合は終始、結城のチームがリードを保ち第2セットは接戦の末落としたもののセットカウント3-1で危なげなく勝利を収めた。
そして試合後には、イタリアらしいと言わざるを得ない、こんなハプニングも。
『Hi,A！』
「ん？」
結城は声の元を辿って観客席を見上げた。
我々含め場内全ての人間が同じ方向に目を向ける。
観客席から一際大きな声で結城を呼んだのは、オーランドブルームを彷彿させる様な甘いマスクの青年だった。
どう見ても20そこそこ、もしくは10代後半もあり得る。
見るからに結城よりも歳下の彼は
『
「……ん？」
『
「⁈⁈」
そう言って真っ赤な薔薇の花束を取り出した。
両チームのサポーターが一つになって会場が一気に盛り上がる。
イタリア語が堪能ではない我々でも分かる。
"プロポーズ"だ。
まさかイタリア人の恋人でも居たのかと驚いた我々より、結城の方が驚いていた。
首にかけたタオルで口元を覆い、絶句していた。
近くに居るチームメイトはこの状況に笑いを堪え切れない様子。
後にわかった事だがこの男性……恋人でも何でもなく、チームメイトの間では有名な結城Aの熱狂的なファンだったらしい。
『ホラ、A返事しないと！笑』
「……え、えっと……」
『僕じゃ役不足？』
「まず……よく応援来てくれてますよね？
いつもありがとう。
……そんな風に思ってくれるなんて嬉しいです。本当にありがとう。
自分の気持ちを素直に、ストレートに表現出来る貴方は素晴らしいと思う。
立派過ぎて、私には勿体ない位。
……私は貴方の気持ちに応える事は出来ないけど、その真っ直ぐな強さと優しさで、いつか他の誰かを幸せにしてあげて欲しいです。」
『……これからも、応援し続けても良い？』
「勿論！貴方の存在と応援は、このチームの宝です。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1022人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
#M(プロフ) - 初めまして。楽しく拝見させていただいてます。是非、2以降のパスワードを教えていただけると嬉しいです。よろしくお願い致します。 (4月29日 19時) (
レス) id: f9e2a1b66a (このIDを非表示/違反報告)
リエ(プロフ) - はじめまして。楽しく素敵な作品で一気読みしました。続きが気になるので、よろしければパスワードを教えていただきたいです。 (4月6日 7時) (レス) @page50 id: 3e6db03f03 (このIDを非表示/違反報告)
ろん(プロフ) - 初めまして。とても惹かれる作品で一気読みしてしまいました！！！もし可能でしたら、続きのパスワードを教えていただきたく思います！お待ちしております。 (3月24日 23時) (レス) id: 4ab3d6e2fc (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品で楽しく読まていただいております。続きが気になるのでよろしければ、パスワードを教えていただきたいです！よろしくお願いいたします。 (1月14日 13時) (レス) id: 0f292486a4 (このIDを非表示/違反報告)
flover(プロフ) - 初めまして。とても楽しく作品を読ませていただいております。何度か読み返しており、続きが気になりました。もし宜しければ、パスワードをお教えいただけないでしょうか？よろしくお願いいたします。 (1月3日 19時) (レス) id: aeaa3e44b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虎鉄
| 作成日時：2019年10月27日 16時
