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丁寧にラッピングされた子供服を、結城は満足そうな笑顔で受け取った。
どうやら納得のいくプレゼントになったらしい。
"ばっちりですか?"
「ばっちりです。」
様々なショップが立ち並ぶ中、彼女は探しているものがある、と再び歩き出した。
続いて訪れたのは雑貨屋。
"またどなたかにプレゼントですか?"
「いえ、自分用にです。
大事なマグカップ、この前うっかり落としちゃって……。」
彼女は、ショックのあまり慌てて破片を片付けた時に切ってしまったのだという傷を、苦笑いを浮かべながら見せてくれた。
傷は既に塞がってはいたが、コーチからこっぴどく怒られた、とも彼女は話す。
無理もない、セッターの指は多彩なトスを繰り出す大切な商売道具だ。
赤、黄色、茶色など一色塗りのシンプルなマグカップから、幾何学模様や北欧調のマグカップまで種類は様々、所狭しと並んでいる。
同じ色でも微妙に色合いの違うシンプルなマグカップを一つ一つ手にとっては
「うーん……」
唸り、首を傾げて戻す、の繰り返し。
セッター独特の感覚で握り心地を確かめているのか、それともそこまで大切なマグカップだったのだろうか。
あまりに真剣な表情の彼女に我々は問いかける。
"買った店で同じものを買えば良いんじゃないですか?"
「それが、頂き物なので店が分かんなくて……」
そう言って、また棚にマグカップを戻した。
結局この日、3軒の雑貨屋をはしごしたが納得のいくものは見つからなかった。
「なんかあんまり人に買い物を付き合って貰う事ってないから変な感じします。
退屈でしたよね、申し訳ないです。」
"いやいや。でも、あんまり迷わないというか相談はされないんだなって思いました。"
「あー……結構言われます笑。」
ちょうどランチタイムの時間、人通りは少なくなっていた。
それなりに歩いた所で、彼女も思い出したらしい。
「あ、そろそろカフェでも入りますか笑」
"はい、是非(笑)"
彼女は結局、エスプレッソではなくカフェモカを注文した。
密着して、疑問に思った事がある。
この日もだ。
"お昼ですけど、それだけですか?
というより、いつご飯食べてるんですか?"
なかなか食事をしている姿を見かけない、という事だ。
お昼時、周りは皆パスタやピザを頬張っているというのに彼女のテーブルには先程注文したホットのカフェモカのみだ。
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#M(プロフ) - 初めまして。楽しく拝見させていただいてます。是非、2以降のパスワードを教えていただけると嬉しいです。よろしくお願い致します。 (4月29日 19時) (レス) id: f9e2a1b66a (このIDを非表示/違反報告)
リエ(プロフ) - はじめまして。楽しく素敵な作品で一気読みしました。続きが気になるので、よろしければパスワードを教えていただきたいです。 (4月6日 7時) (レス) @page50 id: 3e6db03f03 (このIDを非表示/違反報告)
ろん(プロフ) - 初めまして。とても惹かれる作品で一気読みしてしまいました!!!もし可能でしたら、続きのパスワードを教えていただきたく思います!お待ちしております。 (3月24日 23時) (レス) id: 4ab3d6e2fc (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品で楽しく読まていただいております。続きが気になるのでよろしければ、パスワードを教えていただきたいです!よろしくお願いいたします。 (1月14日 13時) (レス) id: 0f292486a4 (このIDを非表示/違反報告)
flover(プロフ) - 初めまして。とても楽しく作品を読ませていただいております。何度か読み返しており、続きが気になりました。もし宜しければ、パスワードをお教えいただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。 (1月3日 19時) (レス) id: aeaa3e44b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2019年10月27日 16時