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次々と部下が倒れていく。少女は銃弾を避けながら距離を詰める。到底人間業だとは思えない動作に恐怖が芽生える
気が付くと辺りは血の海で立っているのはバーボン1人だけであった
なんなんだ、この子は
目の前で返り血を大量に浴びた少女
近くで見るとまだあどけなさが残る中高生くらいの女の子だということに気付く
笑みを絶やさずにいるその表情がとても不気味だった
「仲間なんていないよ。全部アタシ1人でやったんだ」
少女は褒めてと言わんばかりに頬を赤らめる。血のような赤い瞳がバーボンを捉えた
10数人いた大人をたった1人で、しかも少女が。と信じられなくも思うが先程の姿を見てそれが本当だと思い知らされる
そして少女はくるりと後ろを向いて、取り引き相手に向き合った
「あ、そうだ」
少女はトコトコと歩く。男の目の前で止まった
「よくやった。さああと一人、あの金髪を殺ったら終わりだ」
「…ひとり?」
「あ、ああ」
男も少女に恐怖を感じているのか冷や汗が頬を伝う
「…あはははっ」
少女は笑いだした
何がおかしいのか、腹を抱えて笑う
そして、少女は脇から拳銃を取り出す。そして銃声が明け方の港に鳴り響いた。
それはわずか一秒の出来事
取り引き相手の男は静かに目を見開いたまま後ろに倒れた
「大人ってほんとにしょーもないね」
そして少女はバーボンに向き合う
「アタシを雇ったのは実は別の人間でしたーってね」
バーボンは後ずさる
本能的にこの人間はおかしいと、逃げろ、逃げろ、と危険信号が体内を巡る
「かわいそうだね。君も、騙されたんだね」
バーボンは幾つもの死線を超えてきた。しかし、これ以上に恐怖を覚えた事は1度もない
これまでの常識では測れないような、何かがこの少女にはある。
バーボンはいつ自分が死んでもおかしくないし、その覚悟はしていたつもりだった。しかし、いざ、その恐怖に直面し、初めて死にたくないと思った。これまで何人も散っていった同士達を見てきた。やらなければいけないことはまだ残っている。まだ死ねない、と
その思いとは裏腹に少女は相変わらず不気味な笑みを浮かべ続けるのであった
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作者名:ミノル | 作成日時:2023年5月17日 2時