さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ ―第一章― (ページ7)

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和泉side ページ7

霊とは何か？

そう聞かれたら、誰しもがこう答えるだろう。悪だと。
確かに、あながち間違ってはいない。人を驚かせ怖がっている姿を見て快感を得たり女子とは縁がなかったから好機だと着替えを覗き見るやつもいる。

しかし、ささやかな違いがある。霊は全員そうではないということだ。
俺のように背後霊となって悪い憑き物から守ったりするやつもいる。ただ単純に、側にいたいからという理由で背後霊となる奴もいる。

そして＿＿俺は前者であり、後者でもある。

.

一人、おぼつかない足取りで歩き出した諏訪部の横につく。隣の諏訪部に気になったことを聞いてみる。

「諏訪部。どこに行くんだ」

返事が返ってくることはない。

霊となった今では、彼女に認知などしてもらえないのだ。気持ちが沈んだのだがいつものことだと直ぐに考えを捨てた。

暫く諏訪部の横について歩いていると見覚えのある場所が見えてきた。
果てなく広がる蒼い海。水色の絵の具を撒いたような空。遠くから聞こえてくる汽笛音。草の上を楽し気に蝶達が乱舞していた。

諏訪部は一人歩き続け、やがて小さく四角い石の前でとまった。

あれは…

＿＿あれは、俺の墓？……ああ。
なぜ、いきなり諏訪部が何処かへと速足で向かい始めたのかがやっと理解が出来た。

彼女は腰を降ろしいつものように墓に背を預けた。俺も彼女の隣に座る。
時間は静かに流れる。ここが、働き蟻の如く動いている街の一角だとは到底思えない。

諏訪部は、ただただ目を細めて忙しく回る街を見ていた。遠くから、波の音が聞こえてくる。
暫く、時間に身体を委ねお互い何も口開かずにいると諏訪部は口を動かした。

「私ね、判っているのだよ？」
「…何がだ」

嫌な予感がした。

また、潮風が吹く。静かに髪が揺れて、草が囁いた。虫の羽音も聞こえ雲が風に乗り動き出す。
諏訪部は、頭部を墓の頭に乗せ空を見上げた。

「こんなのに行っても意味はないって。どうせ、和泉くんと会えないって。でもね、これに縋るしかないのだよ」

いくな、って言ったらお前はいかないでくれるか
そんな我儘、今の俺には言えない。

諏訪部だって、判っているはずだ。招待された館に行ってしまえば死ぬことくらい。彼奴は、嫌気がさすほどに頭がいい。この先の未来だって、容易に想像できる。

俺は、お前が死んでほしくない。でも、お前は死にたい。
お前が死にたいのは、俺のせいでもあるのか？

諏訪部は、俺の問いに答えることなどなかった。