さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ ―第一章― (ページ34)

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安心そうに　　諏訪部大和ページ34

「あ」

殺人鬼ちゃんにそう指摘されて、ひよくんの存在を思い出した。私としたことが、思わず久方ぶりの友の再開に話し込んでしまったようだ。

不安げに揺れる、ひよくんの瞳。
「ごめんねえ、ひよくん」そう言って彼の頭を撫でれば猫のように瞳を閉じて気持ちよさそうにしていた。
これが無自覚なのだから、随分と末恐ろしい子だ。和泉くんはよく、私のことを「末恐ろしい」と言っているが私的にはひよくんのほうが末恐ろしい気がする。

「いこっか、ひよくん」
「う、うん…」
「じゃあね、殺人鬼ちゃん」

彼の頭を再度撫でて手を引いた。
殺人鬼ちゃんにそう挨拶すれば「はい、自殺サン、また後で」と愛想笑いをした。そんな彼女に私たちは背中を向けてまた歩き出す。

ひよくんと手を結びながら歩くと、隣のひよくんが控えめに「あの…さ」と声をかけてきた。そんな彼にどうしたのかと問う。

「……さっきの、誰…かな？」
「ああ、殺人鬼ちゃん？」
「そ、そう」
「殺人鬼ちゃんはね、私の友人だよ。
本名は、水金リン。お互いに殺人鬼ちゃん、自殺サンって呼んでるのだよ。
私からすれば恰好の相手で、また殺人鬼ちゃんも格好の相手。わりかし仲はいいのだよ？」

そう、殺人鬼ちゃんの説明をすれば彼は「そっ、か」と言ってどこか安心そうにため息を吐いた。

どうかしたのだろうか？私がいつも彼のことを困らせてはため息を吐かせるだなんて、日常茶飯事なのだけれどもどこかいつもの溜息とは違った。
彼も、人間だもの。疲れているのだろうか。

そんなことを思考の隅に置いておきながらひよくんを横目で盗み見た。すると、ひよくんが興味津々と言う目で後ろを振り向く。
彼が振り向いた衝動で彼の柔らかな髪が揺れた。こんな暗い中でも判る、ちょっと不思議な形をしている彼の髪。とても艶があって、手櫛をしても引っかかることがなさそうだ。
心の中で、そう思いながら私も後ろを振り向いた。

すると、まだ殺人鬼ちゃんがそこにいてにこりといつものような笑みを浮かべながら手を振っていた。

殺人鬼ちゃんって、手を振るんだ。見たことなかったなあ。

ちょっと驚いていると、更に驚愕する出来ことがあった。
あのひよくんが殺人鬼ちゃんにふわりと笑いながら手を振り返したのだ。

そんな彼を見て、驚くと同時に子供が成長して、嬉しい親目線の気持ちになった。
何様、とは言わないでくれ給えよ？幼馴染だもの。それくらい思うさ。