さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ー第二章ー (ページ3)

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遊戯　諏訪部大和ページ3

赤い満月が浮かんでいる。
異質な空気が辺りを包み込んだ。
窓から見える薄らとした空は紫に染まっている。

重い空気の下、常人離れした頭脳を持つ諏訪部は駄弁っていた。おどろおどろしさを持つ空気に怯えた感情を見え隠れさせる者もいたが、諏訪部はけろりとしている。

その時だ。一室のフロアに糾合された少年少女諸君のもとに、きな臭い放送がかかった。『ザザッ――』ノイズがかかる。
諏訪部は、棚に隠れて見えないノイズを睨みつけた。
そしてノイズが収まったとき「はいはーい！初めましてだねー！」見知らぬ男の声が、石陶板(タイル)に反響した。

ざわっ。声の波が広がる。

「俺はこのフロアのゲームマスター、天月アヤメ！多分、全員に聞こえているよねぇ？
さぁ、ゲームの説明をしよう！」

遊戯(ゲーム)。
困惑の表情を見せる彼等に諏訪部は一人、「始まったか」と呆けた。

「願いが来たら叶うってさ、ちょーおかしい！そんなポンポン願いが叶う訳ないじゃん！
＿＿君達、嵌められたんじゃなぁい？ま、どーでもいいけど！」狂気的に笑う天月に対し、諏訪部はくわりと欠伸を零した。
緊張感のない彼女は一人、詰まらなさそうな表情で棚にある「白雪姫」を取った。ぺらり、ぺらり。一頁ずつ捲っていく。
だが、飽きた様子で本を閉じて机上に乱雑に投げ捨てた。

「あ、そうそう――」
「嗚呼」諏訪部は遮って云った。「欲望が叶うといいんだけど(死ねるかな、私)」
その言葉に、天月は応えなかった。ただ、薄い笑みを張り付けてモニター越しに諏訪部を見ているだけだ。
やや間を置いてから、天月は応えた。

「――“コロシアイ”をしてもらうよ！」

戦火の火蓋が斬って落とされた。
其実、此処は虎穴よりも恐ろしき場所であったのだ。

顔面蒼白になる者、悲鳴をあげる者、様々な反応を見せた。
彼等が恐怖に打ちひしがれ、動けない中一人の少年は動いた。

「ッ……こんなん……こんなんやってられっかよ！」

そう声を張るなり、窓から飛び降りようと窓鍵に手をかける。「あーあ」諏訪部は愚鈍者を見るような目つきで見つめた。薄らと細められた瞳は相手の内奥までもを見透かしてしまうような怜悧な色がある。
かつて、遭遇した連続殺人犯に投げかけた視線、同じ光であった。

そんな視線に気づいた男は諏訪部を見つめる。
諏訪部は男を見つめた。
有無を云わせぬ圧に気圧され、男は後ずさる。「な、なんだよ……」震えながら云った。