【刀剣乱舞】刀剣女士に転生したら顕現した瞬間に推しに殴られて刀突きつけられました。

薬研藤四郎と謂う刀 ページ8

三人の反応から、確実に地雷を踏んだことに気づき、私はかなり焦った。

「いや、答えにくいなら、別にいいんだけど」

そう言うと、宗三が小さい声で、でも、ちゃんと答えてくれた。

「薬研は短刀でありながらも審神者に最も気に入られた刀でした。

出陣が無い代わりに仲間と口を利くのを禁じられ、暴力の代わりに夜伽があり、それに……」

そこまで言って、宗三は少し言い澱んだ。

「狼藉を働いた刀を罰する、という名目で、あいつ自身が俺たちに暴力をふるうことを強制されてるんだよ」

不動が言葉を引き継いだ。

「あいつは、前の主にもいたく気に入られていて、大切にされていた。その分、落差もあっただろうしな。

だから、おかしくなっても仕方がないんだ。あいつは責められない。

政府が気づくまで、俺たちは今をやり過ごすしかない」

そう言って、彼は悲しそうに笑うのだった。

「長谷部、宗三、蝮にここを案内してやったらどうだ？

審神者や薬研の恐ろしさも充分に分かるだろう。

お前らの実力なら、二人から蝮を隠すことだって出来るさ」

不動がそう言うと、二人は頷いた。

「……不動は？」

恐る恐る尋ねると、彼は悲しそうに目を伏せた。

「俺は行けない。正確に言うなら、ここから動けない。足の怪我のせいでな」

そう言って、不動はジャージの左足部分を捲った。

痛々しい切り傷が、膝から足首の近くまで広がっていた。

「この傷も、例の薬研のせいだ。この本丸から逃げようとしたんだけど、失敗しちゃってね」

薬研……

「手入れどころか手当てすら許されなくね。傷口そのまんまだから、空気に触れると痛いんだ」

彼は、過去の軽い失敗談を語るように笑いながら言った。

「そんな……平然と言ってるけど、大丈夫なの？」

「そりゃあもう、折れそうなほど痛いよ。

でも、政府の調査が入る前になると、全員、ちゃんと手入れされて、本丸も綺麗になる。

痛みにも慣れてきたし、それまでの辛抱だから」

相変わらず、彼は笑っていた。

なるほど。長谷部より機動が遅い原因はこれか。

私に出来ることはあるだろうか。

包帯巻くぐらいなら出来るかも。

包帯の代わりに、私が履いてるハイソックスを使おう。

「不動、ちょっと傷口見せて」

「え？でも、見て気持ちいいもんじゃないだろ？良いけど」

そう言って、不動に改めて傷口を見せてもらった。

やはり痛々しい。

私は、包帯代わりにするため、片方の靴下を脱いだ。

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