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鉄の臭い ページ13

扉を開けると、部屋の中は赤黒い色で塗りつぶされたようだった。

血だ、と分かるのに、一秒も要さなかった。

「誰っ!?……って長谷部さんか。その子は新入り?新刀剣男士実装なんて聞いてないけど」

乱がこっちを向いて言った。

彼の全身は、不動ほど深くはないものの、その代わりにたくさんの切り傷があった。

「こいつは顕現されたばかりの奴で、名前はない。俺たちは『蝮』と呼んでいるがな。

新実装って訳でもなさそうだし、本霊かもしれん。触れば傷が治る、不気味な力も持ってるしな。

まあ、仲良くしてやってくれ」

「不気味って酷くない?」

「不気味は不気味だろう。ただし、ありがたい不気味だ」

そんなやりとりをしていると、乱がふっと笑った。

「初めましてだね。ボクは乱藤四郎。よろしく。

あと、この部屋には五虎退と博多藤四郎がいるんだけど、今は畑当番でいないんだ。

ところで、君も男の娘なの?」

「いや、私は刀剣女士だよ。よろしく」

男だと分かっていても、乱には謎の安心感があった。

「へぇ……長谷部さんたちは蝮って呼んでるみたいだけど、呼んでほしい呼び方とかある?」

呼び方か……前世の名前が一番いいな。

「Aって呼んでもらってもいい?」

「うん!もちろん」

どうして、と尋ねられなかったのは幸いだった。

気を使ってくれたのかもしれない。

握手を求められ、彼の手を握ると、握手した方の手の傷が治っていった。

「へえ。本当に治るんだ。ありがと」

「私もどうしてこうなるかは分かんないんだけどね……どういたしまして」

「この傷、薬研にやられたんだけど……Aも、薬研に対しての仕打ち、知ってる?」

乱は悲しそうに目を伏せた。

「うん。一応、なんとなくは聞いてるけど」

「じゃあ、どうして太刀ばかり気に入る審神者が薬研を手元に置くのか、ってのは知ってる?」

「え?性格じゃないの?」

思わずそう言うと、乱はううん、と首を横に振った。

「もちろんそれもあるんだけどね。それだけじゃないの。

薬研が今みたいなことにならない道を、審神者は確かに示していたんだ。

でも、それをあいつが選ばなかったせいで……」

そこまで言ったところで、襖が開き、乱の話は打ち切られた。

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ツキアカリ - キリンの妖精、キリンロングさん» ありがとうございますm(_ _)m語彙力おばあちゃんにならないように頑張ります(?) (2019年5月18日 23時) (レス) id: 5a16b46531 (このIDを非表示/違反報告)
キリンの妖精、キリンロング - 世代交代(?)頑張って下さい←語彙力の枯渇 (2019年5月18日 22時) (レス) id: 390c1ef0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ツキアカリ - ふはいねこさん» 応援ありがとうございます!期待に添えられるように頑張りますね(。・ω・。)ゞ (2019年5月17日 23時) (レス) id: 5a16b46531 (このIDを非表示/違反報告)
ツキアカリ - 前作者さん» 読みました、自分の文章力でどこまでできるか分かりませんが、この作品をもっとよく出来るように頑張ります! (2019年5月17日 22時) (レス) id: 5a16b46531 (このIDを非表示/違反報告)
ふはいねこ - ツキアカリさん» はじめまして。作者交代お疲れ様です(?) 二代目になっても応援してますね。頑張ってください。 (2019年5月17日 22時) (レス) id: 5701e6bc20 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2018年12月25日 22時

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