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「せめてこれとこれくらいなんとかなんねぇ?」
「ダメ、ルールはルール」
「これ、食用油だって証拠はあるのか?」
「状況証拠がありすぎ。田舎のスーパーのどこに何ℓも入ってる銃のオーバーホール用オイルが売ってるのよ」
「フン。おいヤン!お前、経費をちょろまかそうなんてセコイな」
ガンナーが自分の事を棚に上げてヤンにちょっかいを出し始めた。ヤンの眉毛が即ピクリと上がる。ヤバい。間に座る私はすぐさま席を立つ。
「自分はどうなんだよ、このアル中め」
「うるせぇ、ちびペンギン。あぁ、てめぇは子供だから酒が飲めないんだったな」
「あ?そんなに死にたいなら立てよガンナー。今日こそ地獄におくってやる」
「ハッ!来いよ3号サイズ!」
ガンナーが突如立ち上がってカウンターの椅子を投げ飛ばす。弾かれたように立ったヤンも負けじと飛んできた椅子を蹴り返す。ガンナーはそれを素早く避け、その間にヤンが距離を詰める。にじり寄り始めた両者の殺気立つ空気に嫌気がさしてくる。このトムとジェリーのやりとり、何回目かな。
こんな時のとっておきの奥の手。
「バーニー!!へールプ!!」
「よし来たA。聞いてたぞ。で?元ヤク中の大馬鹿と嘘吐き守銭奴、どっちをほっぽり出せばいいんだ?」
「両方」
「了解」
「すまん、悪かった。バーニー勘弁してくれ」
「バーニー!もう解雇は懲り懲りだぜ」
「2人共、それはAに言う台詞だな」
「「A、許してくれ」」
バーニーはニコニコしながら葉巻に火をつけて「後は任せた」と私にウインクした。ガンナーの肩を慰める様に叩いてカウンターに座らせ、ヤンの頭をポンポンしてやっぱり座らせて奥へ去って行った。流石の手腕、もはや猛獣使い、お見事です。
「……とにかく、この領収書は受け取れないからね。2人共、わかった?」
「ああ、わかった」
「わかったよ、すまねぇ」
「よろしい」
途端に素直になってしゅんとする2人は、まるで母親に怒られた子供みたい。あまりの意気消沈ぶりがなんだか可愛くて、私は慰めついでに2人の頬にキスをしてその場を後にした。
「……おい、ヤン。A、キスしてったぞ」
「ああ……でも挨拶だろ」
「でもアイツ、お国柄なのか全然キスしないだろ。俺に気があるんじゃねーか」
「は?あり得ないだろ。あるなら俺に、だ」
「おいおい笑わせんな。鳥類と哺乳類はヤれねぇぞ」
「Aはヤク中もアル中も嫌いだ」
「あ?」
「あ?」
攻防は続く。
end
ホットドッグランチ(ヤン)→←これは経費じゃ落ちません(ガンナー/ヤン)
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るう(プロフ) - 緋月さん» 緋月様、こんにちは。コメントをありがとうございます!とても励みになります!ヤンが大好きで、これからも書いていきますのでこれからもお付き合い頂けたら幸いです。エクスペ4の話題も出て来たので、ますます頑張っていきたいです。 (2022年10月13日 22時) (レス) @page42 id: 18f6845a23 (このIDを非表示/違反報告)
緋月(プロフ) - 初コメ失礼します。文章の書き方といい、話の書き方がとても好きです!ヤンさん大好きです (2022年10月13日 13時) (レス) id: 2ff1628a0d (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - nonさん» non様、早速感想を頂き有難うございます!嬉しいです!エゴイストはヤンの過去を作成したり内容が真面目だったりと楽しめるか不安でしたが、お好みで良かったです。ホットドッグの話はヤンをキザでお茶目に描く事に注力しました!また是非ご訪問下さいませ! (2021年11月16日 1時) (レス) id: c14aa388ad (このIDを非表示/違反報告)
non(プロフ) - るうさん、こんにちは。エゴイストを読ませて頂きました。ヒロインがヤンと共に戦場に立ち、葛藤しながら生きているという設定がすごく好きでした。ホットドッグランチを読んだら、私も食べたくなってしまいました。 (2021年11月15日 18時) (レス) id: 4771644271 (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - nonさん» non様 初めまして、作者のるうと申します。感想をありがとうございます!とても励みになります。と同時に、同志が居たことに歓喜しています!これからもヤン作品を増やしていく予定ですので、またご来訪下さいませ! (2021年11月10日 9時) (レス) id: c14aa388ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るう | 作成日時:2021年11月6日 21時