消耗品の付属品【エクスペンダブルズ】

脱いだら死ぬ病（ヤン） ページ23

「ねぇ、ヤンって脱いだら死ぬ病なの？」
「ぶっ！！」

　突然Aがとんでも無いことを言い出したので、俺は思わず飲んでいたコーヒーを吹いた。

「きゃー！何してるの！」
「そ……れは俺の台詞だ！何だそれ、何の病気だって！？」
「え？脱いだら死ぬ病」
「はぁ？そんな病気あってたまるか！」
「えー、絶対そうでしょ。みんな言ってるよ」

　悪びれもせずにこっちにティッシュを放り、自分はコーヒーに砂糖を3杯も入れて俺の隣に座り込んで、スプーンでくるくるしている。俺は口元と防弾ベストを拭きながら、呑気にコーヒーをふーふー吹いて冷ますAを恨めしく睨んだ。

「戦闘前に汚れたぞ」
「どーせこれから返り血浴びるじゃん、黒だしわからないって」
「そういう問題じゃない」
「はいはい」

　敵勢力を待ち伏せするのに、この霧深い森で先行して野営している。あと数時間で戦闘開始予定だ。バーニーとクリスマスは地元のバーへ情報収集(という名の殴り込み)に、シーザーとトールは街へ買い出しに、ガンナーは真っ昼間から自分のテントで馬鹿みたいにイビキをかいて寝ている。一応ガンナーも含め、俺達はお留守番部隊だ。小脇には自動小銃を抱えて待機している。しかし、あまりに寒いのと特に敵に動きも無いので、俺のテントの前で湯を沸かして一服してたわけだが、それにしたって酷い言われ様だ。

「大体何なんだ！その、脱いだら死ぬ病ってのは」
「え？そのまんまよ。服脱いだら死んじゃうビョーキ。ヤンって全然素肌を見せないでしょ？着込みまくってて鎖骨すら見た事ないもん！あんまり見せないから、もうそういう病気なんだろってこの前みんなで盛り上がってさ〜」
「着込んで何が悪い？戦闘時に相手の攻撃にさらされないための防御だ。むしろ基本だろ」
「いや、やり過ぎでしょ？40度越えの中東で長袖長ズボンとか頭おかしいよ？」
「俺は全然平気だ」
「えー、ガンナーを見習えば？」
「あんなセンスのかけらもない奴の真似するなんざ、死んだ方がマシだな」
「ほーら、死んじゃうんじゃない」

　完全な揚げ足だ。ケラケラ笑ってコーヒーを啜るAをどうにかギャフンと言わせてやりたい。俺は薄くて冷めかけたコーヒーをあおりながら考えを巡らせ、2杯目に濃いコーヒーを淹れたところでいい案を思いついた。俺のちょっとした欲まで満たせる、一石二鳥の恐ろしく悪くて良い案だ。

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