消耗品の付属品【エクスペンダブルズ】

・ ページ20

「A……」
「ん？ガンナー？何か……っん！？」

　気がついたら、ガンナーは身を乗り出してAの口に齧り付いていた。唇をパイ生地とフィリングごとむさぼり、舌をねじ込んでAの口の中を味わう。熟れたように柔くて甘い。それでもまだ物足りなくて、逃げるAの舌を捕らえ、甘い唾液もパイの名残も全て食べ尽くした。
　一瞬口を離すと甘い余韻に襲われて、またすぐに欲が湧き上がる。再び食らいつこうとガンナーが手を伸ばした瞬間、バーニーに背後から羽交締めにされた。それまで呆気に取られていた他のメンバーも、一斉にガンナーに飛びかかる。

「やめろガンナー！stayだ！」
「ガンナー、てめぇこのクソ野郎が！」
「Aに謝れ変態め！死ね！」
「殺すか？」
「おお、殺っちまえ！」

　みんな口々に罵詈雑言を吐き、ガンナーを床に押さえ付ける。対するガンナーはさして抵抗もしない。追加注文をしたい気分ではあったが、もう満足したからだ。Aの官能的な味は、今更どうあがいてもガンナーのものだ。Aの可愛い食べ方も、赤の重なった唇も、甘すぎる舌と口内も、全部ガンナーだけが知っている。独占欲が満たされ過ぎて眩暈がした。

　赤い顔をして、残りのチェリーパイに手も付けず立ち尽くすAに、ガンナーは床に這いつくばったままウインクして笑いかけた。

「Hey！My cherry pie！次はお前を丸ごといただくぜ」

　馬鹿野郎！いい加減にしねぇか！とバーニーに頭を殴られたけれど、気にするものか。一度味をしめたら、そう易々と引き下がれるはずもない。全部手に入れるまでは。

　ガンナーはメンバーにやり込められても涼しい顔をして、口の中に残るチェリーフィリングの甘さを味わいながらAを熱っぽく見つめる。Aはその視線から逃れるように慌てて席に駆け戻った。けれど残ったパイを見て、もう食べられないと思った。しばらくチェリーパイはお休みにしなきゃと。そうしないと食べる度にガンナーの唇を思い出してしまうから。それはガンナーの思う壺みたいで、Aはとても悔しいのだった。


end

リップクリーム / ストロベリー　バレット（ヤン）→←チェリーパイ（ガンナー）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す