【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の11

猫女房【日本民話パロ】 ページ4

ある処に、金持ちなのに、とてもケチな男がありました。
男の家には、流華という名の猫がおりましたが、男はこの猫に餌をやるのも惜しむ有様です。

そうして。とうとう世話代が嵩むと云って流華を家から追い出して仕舞いました。
もう何日も、元の主人からは真面な餌も貰っていませんから、力も出ません。
流華はトボトボ歩き、やっとの思いで遠く離れた隣家へ辿り着きました。

この家は貧しいけれど、とても優しい青年が暮らしています。
何度か、流華はこの中也という青年にご飯を分けてもらった事がありました。

『にゃぁ』

と、流華が声を上げると、直ぐに戸が開いて青年が中に入れてくれました。

「手前ェ、また彼奴にやられたのかァ？」

痩せて仕舞った流華を自分の膝に乗せて、中也はあるだけのご飯を食べさせてくれました。
そうして、夜は寒くないように、自分の着物の袂に流華を入れて、一緒に眠るのです。

何日も帰らない流華に、捨てられて仕舞った事を察したのか、中也は嫌な顔一つせずにご飯を分けてくれます。

ある夜の事。
貧しい暮らしで一生懸命働く中也に、何かできないかと流華が擦り寄ると

「……手前ェが人間だったら、麦の粉挽きでも頼みてェんだがなァ」

中也は小さく笑って流華の喉を撫でます。

それを聞いて、次の日。
中也が畑に出ている間に流華は麦の粉挽きを始めました。
猫の身ですから、決して上手にはいきません。それでも恩を返したい一心で挽きました。

帰ってきた中也は驚いて、流華を抱き上げます。

「手前ェ、俺の言葉わかンのか？」

じっと見つめてくる中也に、流華は一つ『にゃぁ』と鳴きました。

その日は二人、流華が挽いた麦で作った団子を食べました。
美味しい美味しいとう中也に、流華はとても嬉しくなりました。

次の日も、次の日も流華は麦を挽きます。
けれど矢張り猫の姿では、思うように恩返しができません。

其処で流華は神様に御祈りをしました。

『如何か、私を人にしてください。そして御恩返しをさせてください』

すると、流華の姿に感心した神様が、流華を人間の女にしてくれました。
人間の口で、事情を話すと、中也は大層驚きながらも、喜んで流華を抱き締めます。

やがて働き者の中也と流華は夫婦となりました。

心優しく真面目な二人は、いつの間にか流華の元の飼い主よりずっと豊かになって、ずっと二人で幸せに暮らしましたとさ。

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