歩けば不幸とさよなら【マリぽん様リクエスト:歩けば其処に続篇】 ページ29
「……ふぅ」
息を付いて剥ぎ取った使い捨て手袋が、べしゃり、と湿った音を立てて地に落ちる。
それを気にもせず、中也は歩き出す。
彼が背を向けた壁には椅子が一脚。
其処には、もう原型を留めぬ【人間だったモノ】が座っていた。
誘拐された流華。
彼女を見捨てようとする首領。
助け出す為にもぎ取った猶予は、夕刻まで。
――手段を選ぶ余地はなかった。
片端から事情を知りそうな人間を問い詰める。
もはや、拷問ですらない。ただの暴力だ。
情報から情報へ。
人から人へ。
徐々に絞った網の中で、獲物は突き止めた。
流華のいる場所も凡そ掴めた。
「首領、流華の救出に際し戦闘になる可能性がありますが…」
報告の電話に返された、肯定。
恭しく通話を終了した中也の頬に浮かんでいたのは、禍々しい程の笑顔だった。
※
「……重力、操作」
廃工場の、分厚い防火扉。
機関銃でも、歯が立たないだろう。
だが、中也の前では、こんなモノは意味が無い。
ぐ、と集中した重力にめきり、とへしゃげた鉄扉が見張り数人を巻き込んで吹き飛ぶ。
慌てた歩兵が仕掛ける銃弾雨霰。掌一つでそれをいなして、中也は踏み込む。
「手前ェら…俺のモンに手ェ出してただで済むと思うなよ?」
踏み込んだ瞬間には、もう勝負は決まっていた。
※
『ちゅうやさぁああああん!!』
奥の檻に近寄ると、怪我一つしていない流華が相変わらずの泣き顔で、びぃびぃ泣きながら中也に手を伸ばしている。
――良かった、無事だった。
其れだけで、中也はほっと、息をついて。
救い出した流華をきつく抱きしめた。
「ったく……本当に手前ェついてねェな」
『ふえ?』
首を傾げる流華に、中也は苦笑する。
「俺なんざに、惚れられるなんてなァ?」
――――
リクエストを頂きました。
マリぽん様誠にありがとうございます!
このようなモノでよろしかったでしょうか?
可能であれば感想をお願いいたします。
2017年10月28日ちょこ
記憶の欠片【パピルス様リクエスト:記憶の雨続篇、転生後(記憶無し)】→←異形と間奏曲を【マリぽん様リクエスト:異形と狂想曲を続篇】
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AS(プロフ) - 何時でもいいので、書いて頂けたら本当に嬉しいです!(*´∀`*)これまで数々の素敵なお話を本当にありがとうございました!ちょこさんの作品を通して、視野が広がり、中也さんをより好きになることができました。長々のコメント失礼しました、最後まで応援しています! (2018年5月9日 21時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - これまで読ませて頂いてきました!ちょこさんの作品はずっと尊敬していて、本当に素敵なお話ばかりで、表現も素晴らしく…本当にちょこさんの作品が大好きです。もし良ければリクエストで、死人の幸せの続きで、夢主が妊娠して結婚に至るまでを書いて頂きたいです。 (2018年5月9日 21時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃんりんご - 「死人の唇」の続編ありがとうございます!中也さんと夢主ちゃんが幸せに暮らしているのを見て、嬉しくなりました!こんな素晴らしいお話をありがとうございます!!それとお話を催促するような感じになってしまいすみません。あと少しですが応援してます! (2018年5月9日 20時) (レス) id: 4d17e83c8d (このIDを非表示/違反報告)
ルキア@中原中也の嫁になりたい(プロフ) - ありがとうございます!この作品にあった「再会」そして「再熱」というお話(その5にあったはず…)の続編として、中也、自身の子どもに会うというお話を書いていただきたいのですがよろしいでしょうか? (2018年5月9日 0時) (レス) id: c7e2de022e (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - トップにも書かせて頂いた通り終了間近となっております。なかなかお返事が出来ない状況で申し訳ございません。またリクエストを頂いてもお答え出来かねる事態も発生するかと存じます。ご了承ください。 2018/5/8ちょこ (2018年5月9日 0時) (レス) id: 25228574eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2017年7月1日 21時