【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の11

ラッピングルーム【鈴華様リクエスト：ラッピングラブ続編】 ページ18

そびえ立つ高層マンション。
見上げる流華の頬が思わずひきつる。

ヨコハマの一等地。
ポートマフィアの領地の中とはいえ、絶対に安い買い物な訳がない。

それを、自分の真横に立つ男は、しれっと買ったのだ。

『えっと……隣と間違えてないかな？』

思わず小さなアパートを指差す流華に中也は遠慮もなく大声で笑った。

「安心しろ、彼方に15階なんざ、ねェだろ？」

にぃ、と口角を上げる中也の姿に、ああ此れは現実なのだ、と実感が湧いてくる。

先日、中也は流華の為にマンションの一室を買ったと云いだした。

外食ができない。
素手で硬貨を触れない。
公共の乗り物は断固拒否。

そう、流華は潔癖症だ。
おかげで、人生初めてできた恋人の中也とも、まともな恋愛ができなかった。
付き合い初めてから逢瀬は繰り返しているが、すべてポートマフィア拠点内の流華用の食事部屋という味気の無さ。

自分のせいで中也に迷惑をかけているのではないか？

中也が考案してくれたラップ越しの口づけに甘えながら、いつも何処か後ろめたいような気がしていた。

其れに気づいていたんだと思う。

二人で休日を過ごすために。
そう云って、鍵を差し出した中也。
こんな王子様みたいな事、本気でできる人がいるのか、と思わず意識が遠くなったのを覚えている。

そんなこんなで、今日は部屋の見学と掃除・除菌・薫蒸にやってきた。
もう返品できないなら、受け入れて住み心地を整えるが勝ちだ。

流華の症状を知っている中也は、抜かりなく上履きを持参していた。
もちろん、手袋も。

『中也って』
「あ？」

掃除用のマスクを装着した中也が流華を振り返って首を傾げる。

『私に勿体無いなぁって』
「仕方無ェだろ、好きなンだから」

中也からの真っ直ぐ過ぎる愛に、流華は思わずフローリングの上にうずくまった。


――――

リクエストを頂きました。
鈴華様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
可能であれば感想をお願いいたします。

2017年8月８日ちょこ

欲しいモノ捕まえて【runa☆様リクエスト：欲するがまま(其の４)続篇】→←ラッピングラブ【鈴華様・八紡陽人様リクエスト：ラッピングキス続編】

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