【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の11

海に住むのは【ありす様リクエスト：海にいるのは続編】 ページ15

月の照る夜。
波が行ったり来たりを繰り返す砂浜。
靴を放り出して、流華は浅瀬へと足を沈める。

『中也』

静かに、彼の名を唇から水面に落とす。
暫くそのままで待つと、海が若干うねって。
そして、煉瓦色をした彼の髪が滴を纏って顔を出すのだ。

「悪ィ、待たせたか？」
『ううん、大丈夫』

流華が持ってきたタオルで中也の頬についた海水を拭い取る。
そうすると、彼が擽ったそうに笑うから。
それが楽しくて、もう一度触れる。

「もう良いって！」

中也が笑った拍子に、海の中で彼の尾鰭が跳ねて、光った。

中也は人魚。
流華は人。

住む場所も、種族も違う。
それなのに、二人の心は惹かれあって。

「嗚呼、そうだ。
流華、手ェ、出せ」

いきなり、そう云われて、流華は目を丸くする。
早く、とせかされておずおず差し出した掌。
その上に、ころん、と何かが落とされた。

月の光を受けて煌めくそれは、大粒の真珠。

「真珠の首飾りって、分かるか？」

訊かれて、頷く。
大きな真珠が連なった物なら知っている。

「人魚の男は、そうやって一粒ずつ好きな相手に渡すンだよ」

そして、一粒一粒に想いを込めて。

「首飾りが完成したら、夫婦になる」

中也の青い瞳が、真っ直ぐに流華を見つめていた。

「嫌か？」
『……嬉しい』

流華の瞳からポロポロと涙が落ちる。
中也といられるのなら、暗い暗い海の底へ行っても良い。
素直に思えて何度も何度も首を縦に振る。

きっと、もう戻る事は出来ないのだろう。
海にいるのは、あれは人魚だと知ってしまったから。

幼い頃に種を撒かれた小さな恋は、時と共に育った。
まるで、海の潮が満ちるように。

『中也、私を連れていって』

貴方の世界に。
微笑んだ流華を、中也の白い腕が抱き締めた。


――――

リクエストを頂きました。
ありす様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
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2017年7月31日ちょこ

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