【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の9

地底の愛【葵様リクエスト：地底の始続編】 ページ44

運命の出会いから一年。
中也は【少女】を他のどんな物よりずっと大切にした。

食事を与え、住む家を与え、名前も与えた。
流華、そう呼べば、彼女は嬉しそうにする。

狭い処に押し込めたり、暴力を振るったり、そんな事はしない。

心地良い事だけを与えて。
中也は流華を愛していると囁いて。
そうして、真っ新な彼女の心身を染めていく。

同じ家に住む事。
同じ風呂に入る事。
同じ蒲団に入って眠る事。

全て自然な事だと、ゆっくり常識を溶解していく。

流華は今では中也の施す全てを嫌がらずに受け入れる可愛い可愛い中也の恋人だ。

「また、服買うぞ」

雑誌を広げれば、嬉しそうに寄ってくる。

何も着ないまま籠に押し込められていた姿も綺麗だったが、流華は何を着せても良く似合う。
特に、暖色は顔うつりも良いし、流華も気に入っている様子だ。

流華を誰にも見せない為には、服はこうして雑誌で選んだ物を取り寄せるのが一番手っ取り早い。

『あ、これ…可愛い…』
「なんだァ？先刻から橙色ばっかりだな？」
『だって…好きだから…』

中也の髪みたいで…。小さく呟く様が可愛らしくて思い切り抱き締めた。

「なァ、流華」
『なぁに？』

こてん、と首を傾げる流華。
中也は優しく流華の髪を梳きながら微笑みかける。

「今な、新しい家作ってンだ」
『家？』

とても不思議そうにする顔が愛らしい。

「明日、住む処を見に行くけど…来るか？」

問えば、流華は首が折れてしまいそうな程首を横に振る。

『やだ！』
「如何してだ？」

尋ねれば、『中也以外は怖いから…』なんて泣きそうな顔をする。

これは、中也が一番強く流華に言い聞かせてきた事だ。
中也以外は恐ろしい人間だ、と。よく理解している流華に思わず口角が上がる。

「良い子だな、流華…でも、明日は俺と流華だけ、だぜ？」

そう誘えば流華は眼を輝かせて、行きたいと云う。

狂っていて、純粋で、甘い。
この関係を、ずっと続けよう。

新しく出来る、地底の巣で。

――――

リクエストを頂きました。
葵様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
可能であれば感想をお願いいたします。

2017年4月23日ちょこ

ヘリオトロープ【八紡陽人様リクエスト：中也がヘリオトロープの花を夢主に渡す話】→←甘えん坊アングリーラヴァ―【誠咲（みざ）様リクエスト：甘えん坊シリーズ続編】

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