【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の9

地底の始【葵様リクエスト：地底の巣続編】 ページ41

中也が流華と出逢ったのは、数年前。
幹部職を拝命した直後の事だった。

裏社会には、違法な金でぶくぶく太った豚なんて、掃いて捨てる程存在する。
その日、中也はそんな男の一人の家で開かれた宴に赴いていた。

倒錯した世界の中。
趣味の悪い調度品。目に痛い装飾。
宴の名を借りた其れは、上品さの欠片もなかった。

持ち物、調度品、着衣。全て中也の趣味とは間反対。
得意先でなければ、今すぐ殺してやりたい。
頭痛を感じながら、暇潰しを探していた時。

隅に、動物展示を見つけた。
これだって十分悪趣味だが、動物はまだ良い。
少なくとも、下品にチカチカしたり、持ち物を自慢したりしない。

檻の中身と、説明を交互に見て回る。

一番奥まで歩いて、思わず固まった。
檻の前の説明には、短く、一言だけ。

【少女】

そう、書かれていた。

慌てて檻を見やれば、一糸纏わぬ姿の、紛れもない人間の少女が小さく震えていて。
彼女は、まるで、風切り羽を切られた天使のようだった。
雷に打たれたような衝撃が、体を貫いた。

恋、よりももっと熱く歪んだ願望に心を焼かれた。
彼女が欲しい。爪の一欠けら、髪の一筋まで、手に入れたい。

『ハツモノだし、後で皆さんに振る舞う心算だったんですがねぇ』

下卑た事を云う男に、金と、次いでにポートマフィアの肩書をチラつかせる。
心底残念そうな顔で、男は、中也に彼女を売った。

其れが、中也と流華の馴れ初めだ。

その日のうちに中也は流華を医者に診せ、健康状態を確認した。

健康である事が分かれば、もう誰の目にも曝したくはない。

一先ず連れて行く先は自宅しかない。

けれども。其処では完全に、安全とは、云えない。
そうだ。地下に流華専用の部屋を作ろう。

そんな事を考えたのは、流華を乗せて車に乗った時だった。

「此れから、手前ェは俺のだ」

運転席から、後部座席の流華を見れば。
彼女は不安げに頷いていた。

――――

リクエストを頂きました。
葵様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
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2017年4月20日ちょこ

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