【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の9

甘えん坊ラーンドアレッスン【誠咲(みざ)様リクエスト：甘えん坊シリーズ、叱られる夢主】 ページ16

「流華！！」

中也の声に、流華の肩がびくり、と跳ねる。
その反応でよく分かった。

――此れはクロだ。

「ナイフ、触ったな？」

断定するように問えば、流華の眼が泳ぎ始める。
其れを捕まえるように、少し屈んで彼女の眼を覗き込む。

『…ごめんなさい…』

観念したのか。中也の眼を見て、それから首を下げて流華は降伏した。

しゅん、と項垂れる彼女は、本当に愛らしいと思う。
だが、今は其れ処ではない。

「なンで触った？」
『…お手入れ、しようと思ったんだけど…』

なるほど。其れで書き物机の上に置かれていたのか。
流華なら、あの机の抽斗に手入れ道具を入れているのも知っている。

中也のナイフは特注品だ。
勿論、切れ味は保証書付。
男の首でも、簡単に撥ねる。

流華の細い指など、一瞬で骨ごと断つだろう。

――手入れ道具を入れてある抽斗に、鍵をしておいて本当に良かった。

「此れは、駄目だって前云ったろ？」
『うん…でも…』
「ン？」
『中也、疲れて寝てたから、何かお手伝いしたくて…』

甘えんぼうで。
寂しがり屋で。
ちょっと我儘。

そんな流華が、自分をこんなに想ってくれている。
今すぐ抱きしめたい愛おしさをぐっと押し込めて、項垂れたままの流華と眼を合わす。

「もう、しねェな？」
『うん』

頷く流華。
髪を梳いてやると、彼女が小さく声を上げた。

『中也…ごめんなさい』

今度こそ、無理だった。
寧ろよくここまで我慢したと思う。

ぎゅ、と抱きしめると流華が甘えてくる。

「なァ…流華」
『なに？』

そっと、身を屈めて。
額に、頬に、鼻筋に。
甘やかすような口付けを繰り返す。

擽ったいのか、流華は声を上げて笑いだす。

「俺は、此れで元気になるから」

零れる笑みを飲みこむように、唇を重ねる。

「次、俺の為に何かしてくれるなら…此れにしろ」

耳元で低く囁くと、流華の顔が、一瞬で茹でたみたいに赤くなった。

――――

リクエストを頂きました。
誠咲(みざ)様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
可能であれば感想をお願いいたします。

2017年3月14日ちょこ

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