天邪鬼 ページ8
若干中也さん寄り視点です
※
「なァ。
俺が、死んだら…どうする？」
中也は、自分の吸い差し煙草を見たまま、吐き出す。
睦言には不向きな辛い(からい)言葉。それでも。こんなことを言わせるのは、暗い部屋を照らす満月がいけない。此間死んだ部下を思い出す。あの日もこんな満月だった。
『んー、まずは貴方を氷漬けにして仕舞おうかな』
濡れた髪を拭きながら浴室から顔を出した流華は怪しい笑みを浮かべる。
「哀しいだとか、ちったァ可愛げのあること言えねェのかよ」
舌打ちして彼は煙草を灰皿に叩きつける。
『哀しくない訳…ないでしょ』
ぽつん、と流華の言葉が闇に落ちる。
『哀しいわよ、中也がいない世界なんて』
だから、と彼女は中也の待つベッドに腰かけて口角を上げる。
『だから、貴方を氷漬けにするの』
「はァ？」
『土になんか還してあげない。灰にもしない。神の国にも送らない。
氷漬けにした貴方の遺体を真っ赤な薔薇に寝かせて…それを抱いて寝るの』
「…莫迦か」
す、と伸ばした中也の掌が、彼女の頬を拭う。
微笑みを作った笑みの横を、透明な雫が伝っていた。
「本気にして泣いてんじゃねェよ」
『これは、髪を洗った水』
「云ってろ、莫迦」
悪かった。泣かせるつもりはなかった。素直に出てこない言葉の代わりに何度も宥めるような口付けを贈る。
触れた背は泣き過ぎた子どもみたいに不規則に震えていた。
それでも
『だから、泣いてない』
強がる姿は流華らしい。
「…こんな塩辛い水があってたまるかよ」
止まず流れるモノを舌先で掬ってからかうと、彼女は茹でたみたいに紅くなった。
そんな姿さえ、妙に愛おしい。
「安心しろ、しばらく手前ェを置いて逝く予定はねェから」
『うるさい、もう！』
「だから、手前ェも死ぬなよ…流華」
天邪鬼な彼女は『知らない』と顔を逸らす。それがきっと彼女なりの≪愛してる≫。
勝手に解釈して、中也は細い体躯を抱く腕に力を込めた。
―――
追記・2016年6月24日、2000hitを超えました。
ひとえに、皆さまのおかげでございます。
駄作者ではありますが、感想、リクエストなどありましたらお寄せ頂きますようよろしくお願いいたします
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 491人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか！！！ありがとうございます！！Ｂダッシュで見に行きます！！ (2016年7月17日 10時) (
レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます！読んでいただけて嬉しいです！！先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします！！ (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです！！ハッピー方面で！！ (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます！先刻アップさせていただきましたのでご確認ください ！！ ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます！これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております！ (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時：2016年6月14日 21時
