叶わない ページ46
片思いかつ女々しい中也さんがいます。そして悲恋です。
苦手な方はお気を付けください。
※
俺は神も仏も信じちゃいない。
けれど…
もしもいるのならば。
それは、きっと残酷に笑っているのだろう。
足元が崩れて、墜ちる。そんな眩暈に似た世界で中原中也はぼんやり、そんなことを思った。
彼が流華と出会ったのは酒場だった。
カウンターに腰かけて、一人でニコニコと飲んでいた横顔。
初めて見た時、いい女だと思ったのを、覚えている。
其れから何度か、飲みに通ううちに話すようになった。
口をきいて、益々惹かれた。
屈託なく笑う、可愛い女だった。
真っ白な女だった。
そして、知ってしまった真実。
流華が軍警勤めだということ。
そして、女の癖にそんな仕事を選んだのはマフィアのせいだということ。
『私、両親を殺したポートマフィアを捕まえて、本当に平和な世界を作るのが夢なんです』
純真無垢なその笑顔は、目の前の男が憎きマフィアと知らぬが故。
彼女は知ってしまったら、どんな顔をするのだろう。
嗚呼、眩暈と耳鳴りが…止まない。
「苦しい」
独り、自室の窓から月を見上げる。
敵の暴力に遭っても、こんな弱音など吐いたことの無い男が。
ポートマフィアと呼ばれる組織の五大幹部と恐れられる男が。
たった一つの恋を手放さんが為に吐き出した苦鳴。
崩れそうな視界の中で、彼女の笑顔ばかりがちらつく。
彼女を黒く塗りつぶすことはできない。
自分を白に戻すこともできやしない。
何時か、流華が自分を追い詰めるか。
若しくは、任務を得た自分が彼女を殺すのか。
何方にしたって、幸福な結末なんて無い。
「恋が甘いなンて抜かした奴は誰だよ…」
もう、あの酒場には行かない。
逢わない、それが賢明な――唯一のまともな解答。
「嗚呼、苦しい…」
呻くように云って、中也は一人酒を呷る。
今日は何時もならあの酒場に行く日だった。
屹度、真っ白な彼女は俺を待っている。待っている。
だから、真っ黒な俺は…もう行けない。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時