【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の1

世話焼系男子と脱力系女子-前編- ページ41

自分で云うのもなんだが、私という人間は同年代の子女に較べて汚いと思う。そう、物理的に。

お風呂は嫌い。お化粧は嫌い。髪は寝起きのぼさぼさ。

なんでこんなか、て？
時間が無いからだ。私という人間は忙しいのだ。
まずは本を読む。戦略、戦術、心理学。生き抜く為に知識は多い方が良い。
それから体術。ポートマフィアと呼ばれるこの組織では実力が無ければ死ぬ。
そして忘れてはいけない、食事。この仕事は体が資本。体だけは保たなくては。

そうこうしていたら、部屋は散らかるし、基本以外の生活は荒れる。

そんなこんなで首領が私の上司に付けたのが中原中也。

「手前ェ！待てコラ！そんな恰好で何処行く気だ！！？」

世話焼き属性のちびっ子マフィア。一応幹部。脳筋。
外見から持ち物まで、独自の美学で飾った彼は、私と対局の人。

なのに。

「ったく！！流華！！」

彼は私を見捨てなかった。
まぁ、どうせ首領辺りからの命令だろう、なんて無視しても。
毎日目覚ましよろしく起こしにくるし。
目覚めて一番に彼に髪を梳かれる。
極め付けに、服まで決められる。
監督下で部屋の掃除もさせられた。

『中原幹部、面倒くさい』
「うるせェ！」

口の悪い彼と面倒くさがりの私。
大きな怒鳴り声と小さな苦情。

「流華、そろそろ手前ェの世話くらい手前ェでしろ！」
『放っておいてくだされば元通り生活できますので』
「だぁあああ、もう！」

苛々と彼は私の世話を焼く。

いつの間にか彼は一週間のうち三日、私の部屋に泊まっていくようになった。
男女のあれやこれやの垣根を飛び越えた関係になった訳だ。

きっかけはいつも通りの、小さな口論だったと思う。

「手前ェ、風呂は！？」
『面倒です。入れたいのであればご自由に』
「はぁ！？いい歳した女がナニ云ってるか分かってんのか！？」
『お風呂でしょ？あ、全裸に照れてます？』
「流華、手前ェ、そんなこと男に云ったら…」
『中原幹部は別に良いですよ。私を手籠めにする度胸無さそうですし』

それが、引き金。

「仮にも俺は、手前ェに惚れてんだ」

如何なっても知らねェからな。
彼は、そう云った。そして私は、初めてをそんな男に捧げた。

それから、週三日彼は来る。私を抱きに。そして私を洗いに。


≪続く≫

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