貴方と出会って花になるーざくろー ページ36
暗い暗い、地の底。死者の国。
ポートマフィアで人を屠って生きる自分はきっとそんな世界の住人。
分かっている。
彼女とは住む世界が違うなんて。そんなこと、分かっている。
それでも、胸が苦しい。
彼女と出会ったのはある日の昼下がり。
ただ交差点で肩がぶつかっただけの関係。でも。
『すいません!』
素直に謝る姿。心配そうに寄せた眉。「大丈夫だ」と返した時に見せた、笑顔。
一瞬で心奪われた。どこの誰かも知らない女に。
嗚呼、きっと汚い世界なんて知らない純粋無垢な女なのだろう。
あの笑顔を思い返すだけで呼吸さえままならない。
「…汚れちまった悲しみに…」
もう、自分は彼女の元へは行けない。光り輝く世界で生きるには穢れすぎた。
不意に、名案が頭に浮かんだ。
※
『…ここは?』
目覚めた彼女は驚いた顔をした。次に見せたのは怯え。
誘拐され、見知らぬ部屋にいるのだから当たり前だろう。
けれど中也が感じたのは憐憫でも罪悪感でもなく、悦楽に似た興奮。
恋い焦がれた女をようやく手に入れたのだから。
あの日降ってきた妙案。
自分が彼女の傍に行けないのならば。
彼女を自分の傍に連れてくる。
その為に、一か月。出会った場所に立ち続けた。
そして、やっと見つけた彼女が、今自分の傍にいる。
嬉しくなって思わず彼女を囲う檻に近づく。
彼女の目が揺れる。
「俺の事、覚えてるか?」
『前に、ぶつかりましたよね?』
嗚呼、覚えていてくれた。此れだけの事がこんなにも嬉しい。
「手前ェ、名は?」
『流華、です』
その響きすら、魅惑的。
「…流華」
思わず繰り返すと、彼女はびくり、と震えた。
その姿でさえ、愛おしい。
皿に盛った赤い実を檻の中へ差し込む。
古来より死者の国の果実とされたその実。
「食え」
毒かもしれないというのに素直に口にする彼女はもう、俺の物だ。
その花の名は≪柘榴≫、花言葉は≪愚かさ≫
【「柘榴を食った奴はもう地上に戻れないって伝説、知ってるか?
手前ェはもうこっちの住人だ。俺は手前ェを嫁に貰う」そう云って中也は笑った】
貴方と出会って花になるーくわー→←貴方と出会って花になるーさるすべりー
491人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時