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さくらんぼ ページ31

紅い煌き。まるで、食べることのできる宝石のようだ。
しばし眺めてから流華は『頂きます!』と皿に盛ったそれに手を伸ばす。

そっと茎を摘まんで、持ち上げて、口に運ぶ。
つるり、とした表面、皮を破った時に溢れる果汁、甘い香り。

『美味しい!!』
「何がだ?」

ひょい、と横から顔がのぞき込む。

「ひゃ、おかえり!」

どうやらいつの間にか帰宅して隣まで来ていたらしい、同棲中の彼氏。
中也は職業柄気配を消すのが上手すぎて、気づけば背後をとられているので心臓に悪い。

「で、ナニが美味いって?」
『さくらんぼ!今日お野菜買ったら八百屋さんが分けてくれたの!』

流華はまた茎を摘まんで口に運ぶ。
食べられない茎と種はそれ用に皿を置いて溜めておく。

嗚呼、至福。

すると、横から黒い手が伸びてきた。

『中也もさくらんぼ食べる?』
「こっちに用事があンだよ」

彼がひょい、と摘まんだのは食べ終わった茎。

『それ美味しくないよ?』
「知ってる」

云いながら口に放り込んだ。
一体何をする気かと思ってみていれば、暫く口をもごもごさせて。

「ん」

彼が口を開けると、舌の上でさくらんぼの茎が結ばれていた。

『うわ、凄い!どうやってやったの?』
「舌が器用なら手前ェもできるだろ?」

云われて頭にきたから茎を摘まんで練習してみる。
いや、してみた、けれど…

『無理、できない!!』

流華は音を上げた。もう舌が攣(つ)りそうだ。
そんな彼女の横で中也はもう一つ、結んだ茎を作り上げた。

『なんでできるの!?』
「コツが分かればカンタンだって」
『ええ?』

『じゃぁ教えて』というと彼は大層悪い顔をした。

「教えてやるよ」

その声が艶を含んでまずい、と逃げを打つがもう遅い。

重なった唇。
入り込んでくる舌。
まるで別の生き物みたいに蠢く。

「…こうやるんだよ」

離された時にはもう酸欠で頭が回らない。
ああ、そういえば誰かが云っていた。さくらんぼの茎を舌で結べる人は口づけが上手いひとなのだと。ぼんやり過った思考は再び重なった唇に溶けていく。

机の上でさくらんぼが二人を見て居た。

ただいまとおかえり【流れ星様リクエスト:中也に甘える夢主様】→←酒場らぷそでぃ―後編



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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/  
作成日時:2016年6月14日 21時

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