六月の ページ4
中也視点になります
※
『中也!!!』
此奴は本当に。
『ねぇ、中也!』
うるさくて。
『中也、どうしたの?』
…愛しい。
「なんでもねェよ」とだけ言えば、『良かった』と仔犬みたいに擦り寄ってくる。
最愛の恋人。だのに、俺がこんなに想ってるのに…此奴の、流華の色は黒だ。
俺と同じ、マフィアの薄汚れた黒だ。
それが解っていて、許されないと識っていて、望ますにいられない色がある。
吸い差しの煙草を灰皿に押し付けて俺は月を見上げる。
隣では、すっかり静かになった流華がシーツに包まってスヤスヤと穏やかな寝息を立てていた。
※
2週間後。
俺は流華を乗せて、車を運転している。
『遠出は久しぶりだね』
なんて、此奴は隣で呑気に外を眺めてはしゃいで…まったくいい気なもんだ。
「もうすぐ、着くからな」
そう声をかけると彼女は嬉しそうに笑った。
※
『うわぁ、綺麗…』
俺たちの前に、一本の樹が美しい花を開いていた。
俺たちには、手の届かない…白い花。
それでも、俺はその真白に手を伸ばす。
「流華、知ってるかァ?」
『何?』
「この樹の…リンゴの花言葉」
風が、木の葉をざわめかす。
『中也…?』
彼女の眼が揺れる。
「リンゴの幹は、≪名誉≫。
俺にとって、手前ェと出会えたことは、まさにソレだ」
そして。
帽子を取って、俺は跪く。
「リンゴの花は≪永久の幸せ≫。
流華、俺は、手前ェを幸せにする自信はねェ。それでも、少なくとも泣かせることはしねェつもりだ。だから…嫁に、きてくれ」
ほんの少しの沈黙の後、流華は笑った。泣きながら、笑った。
『嬉しい…。中也ぁぁ!』
抱き着こうとするから慌てて立って抱きとめる。
そんな顔してると、ほんとに本当に、この花の白が手前ェに似合いだとつくづく思う。
「流華愛してる」
『中也、私も愛してる』
まだ、涙声で言う彼女に小さく口づけを贈る。
「そういやァこんな伝説もあったな」
『え?』
「リンゴの花の下で愛を誓うと幸せな夫婦になる、ってな」
『そう、なりたいね』
リンゴの花を見上げる流華の花嫁姿に思いを馳せ、俺はきつく抱きしめた。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時