酒場らぷそでぃ―前編 ページ29
真夜中。
流華は携帯電話の着信音で目を覚ます。眠い目を擦って見た画面。
≪着信:広津柳浪≫
またか、と頭を抱えながら車の鍵を探しながら通話釦を押す。
どうせ要件は分かっている。我が迷惑な酔いどれ彼氏の回収だ。
※
中也は酒好きだ。然し、残念ながら下戸並みの耐性しか持ち合わせていない。
おかげで、一か月に二回か三回(酷い時はもっと)車で迎えに行く。下手をしたら喧嘩を売った相手に平謝りするのも、壊した店の備品の弁償も、まともに歩けない中也を抱えて帰るのも、全て流華の仕事だ。
だのに、当の本人は翌朝「よく寝た」と目覚めたかと思えば何も覚えていない始末である。
流石に頭にきて
一、 一晩バスルームの床で寝かす
二、 寝ている間にぐるぐる巻きに拘束する
三、 目覚める前に冷水をぶっかけて叩き起こす
と、何かと嫌がらせをしても、全く懲りない。仮にもマフィアの幹部なんだからもう少し緊張感を持ってもらいたいものだ。
頭を抱えながら、眠気覚ましに薄荷の強いガムを噛んでアクセルを踏む。
車は順調に夜の街へ走り出した。
※
最近の中也のお気に入りらしい店の手前の駐車場に車を停め、足早にかの店に向かう。
今日はどんな惨状か、考えるのはもう止めた。頭痛の種にしかならない。
半地下の店舗の扉を押し開けると、中は紫煙と酒気に霞んで見える。
静かなジャズの音は良いが、ここに長居したらこちらまで酔ってしまいそうだ。
なんとか目を凝らすと、品の良い老紳士と、白衣姿の男の間で倒れる小さな背中が見えた。
ヒールがかつかつ鳴るのも構わず其方に向かうと、片眼鏡の紳士が軽く手を上げた。
『広津さん、すいません!今日は何を仕出かしました!?』
「いや、此方こそ夜分にすまないね。今日は珍しい酔い方のようだ」
意味が分からず、向こうで煙草の塔を作る梶井基次郎に目を向けるが答えは得られない。
その時。
「ひりょつ、流華はまらかぁ!」
行き成り倒れていた酔っ払いが復活した。ああ、梶井の煙草芸術は崩落だ。
『はいはい、迎えにきましたよ!!』
慌てて中也の目を覗き込むと――――ふにゃ、と笑った。母親を見つけた迷子みたいに。
「流華だ」
『はいはい貴方の恋人流華ですよ』
不覚にも、可愛い表情にときめいたのを隠す為乱暴に言ってみたが、顔が赤いのが自覚できる。
と、次の瞬間。
彼の手が伸びて。バランスを崩して前のめり。そのまま、口づけられた。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時