踊り子―後編 ページ18
「一人か?」
カクテルを傾ける流華の頭に洒落た帽子が乗せられる。
一寸怒ったみたいに頬を膨らませる相手に、中也は口角を上げた。
『仮にも逢引(デート)だって時に他の男がいたら如何する心算?』
「あァ?んなもン、潰してやる」
『あ、妬いてる。ちょっと嬉しいかな』
流華はくすり、と笑う。
「もう手前ェは飲むな。弱ェくせに」
『中也には云われたくないな』
リズミカルに飛んでくる反論が心地よい。
これが流華の魅力だと中也は小さく笑いながら隣の女を見やる。
注文した葡萄酒で二人盃を合わす。
軽やかな音色に、出逢った時みたいにどちらからともなく笑いだした。
あんまり飲むと、お互い記憶が飛ぶ。
分かっているから、僅か一杯で酒場を後にする。
「珈琲、飲みに来るか」
なんとなく二人の間で隠語みたいになった誘い文句。
流華はほんのり頬を染めて頷いた。
※
酔い覚ましに中也が淹れてくれる珈琲が好き。
前来た時に流華がぽつん、とそんな事を云った。いつの間にやら台所に居座っている中也と揃いの女物のマグに珈琲を準備してやる。
「おい、餓鬼!相変わらず砂糖3つにミルクか?」
『うるさい。同い歳なんですけど』
「俺はブラックだ」
『胃に穴開けばいいのに』
相変わらずの可愛くない言葉に腹も立たない。口笛でも吹きたくなるのを必死にこらえる。
そんな中也に流華は少し笑う。中也と目があったら不機嫌そうに逸らされたから、『照れてる』と野次を飛ばした。
※
マグはいつの間にか空。
そしたら、二人。お互いに口づける。
「甘ェよ、莫迦」
『中也は苦い』
女の白い指が男の首元を這う。何とかして男が首に巻くチョーカーを外す心算のようだ。
対する男は女の好きにさせてやりながら、器用に女の襯衣(シャツ)の釦を外していく。
「最初、済まなかったな」
『何?私が処女だったから?』
「あァ」
『良いの。中也だったし』
その橙がかった茶の髪が、海のような瞳が、少年みたいな笑みが。
貴方の全部が、好きになったから。
「…愛してる、流華」
『耳元で其れは、反則!』
「は、言ってろ…お前も素直になれよ」
『もうとっくに素直じゃない。じゃなかったら毎週中也に抱かれに来たりしない』
流華がぽつんと云った言葉に中也はまた笑った。
ほら、その笑顔に…また恋に落ちていく。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時