手紙 ページ16
死ネタ注意です。苦手な方はご注意ください。
※
万年筆を手にとる。
嗚呼、そういえば此れも貴方がくれた物だった。
そう思うと涙が溢れそうになるけど飲み込んだ。
せっかく選んだ便箋を濡らしたくない。
ぼんやり滲む視界で天井を睨んでなんとか涙を引っ込める。
さぁ、なんと書こうか。
≪拝啓 中原中也様≫
そこまで書いて筆が止まる。
ちゃんとした手紙なら時候の挨拶なんか入れるのかな?
でもいいや。もう云いたいことを、書こう。
≪この莫迦野郎!無責任男!!ヤり逃げチビ!!!≫
ちょっとすっきりした…ううん、やっぱり泣きそう。
三ヶ月前。
私の部屋にきた恋人は泣きそうな瞳で云った。
「流華、手前ェを…抱いても良いか?」
なんだか厭な気配はしていた。ここで拒んだら二度目は無い、そんな気配。
だから、私は貴方に身を任せた。人生初めて身を委ねた男が中也だった。
幸せだった。
なのに…!!
≪帰ってきて≫
思わず書いて自分で後悔した。
有り得ないんだ、お伽噺じゃあるまいし。
あの人はどうしたって帰らないんだ。
そんなの知ってる。知ってる。
でも
『中也、帰ってきてよ』
抱きしめてほしい。思わず浮かんだ願いに涙が止まらなくなる。
不可能なのだ。
私を抱いた次の日、彼は任務中に―――死んでしまったのだから。
そんなことは百も承知で、それでも願望が止まらない。今にも部屋の扉が壊れそうな勢いで開いて、あの素敵帽子がひょっこり顔を出しそうなんだ。
なのに…現実は覆らない。
だからせめて。
≪貴方のこと、本当に愛してる≫
手紙で貴方に伝えたい。
空の向こうに逝ってしまった貴方に。
≪私、妊娠したんです≫
あの日。あのたった一回の行為で。
≪もちろん貴方の子供です≫
父親の顔も知らない可愛そうな私の赤ちゃん。でも。
≪一人でも、この子を立派に育ててみせます≫
貴方が生きていた証に授かった命だから。
≪男の子だったら、貴方の名前を貰って中也と名付けるつもりです≫
だからどうか。
まだまだ泣いてばかりの未熟な私を、見守っていてください。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか!!!ありがとうございます!!Bダッシュで見に行きます!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです!!先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします!! (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです!!ハッピー方面で!! (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます!先刻アップさせていただきましたのでご確認ください !! ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます!これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております! (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年6月14日 21時