傷跡 ページ1
「この、莫迦！！！」
大音量の怒声に流華の鼓膜がビリビリと震える。
仕事で負傷して、帰って、彼氏に言われた第一声にしてはちょっと酷い。
『そんな、怒らないでよ』
思わず耳に手を当てながら見上げる…程もない彼の眼をみる。
吸い込まれそうな、海の青。その瞳が揺らいでいる。
「ったく…こっちの気もしらねぇで」
噛みしめられていた彼の歯が軋る。
「見せろ」
『え？』
「良いから傷、見せろ！！」
なんでそんなに怒っているのか、さっぱり分からない。
混乱する頭でおろおろしていると頭上から
「早く！」
と、急かされる。
渋々、白いシャツを捲り上げる。
まだ生々しく血の滲むガーゼが辛うじて傷口を守っていた。
そのガーゼさえ、邪魔そうに引き剥がす中也。
彼の眼にその醜い傷が晒されているのが何故だが堪らなく恥ずかしい。
「…ナイフか？」
『う、ん…』
彼の息が、肉に、血管に直接滲みて無意識に体が震えだす。
「誰にやられた？」
『敵…』
「そいつは？」
まるで催眠術。流華は誘導されるまま答えずにいられない。
『殺し、た…』
物騒な返答に「そうかよ」なんて返して、傷口の前でしゃがんだ彼がこちらを見上げる。
「ちょっと、我慢しろ」
『へ？…っ！！！！』
いきなりの激痛。
ぬるり、と生暖かい感触でやっと理解が追いつく。
中也が、傷口にむしゃぶりついている。
『やっ、いたぁ！！！』
「我慢しろ、消毒だ」
口元に自分の血をこびりつかせたままの、彼の息が荒い。
『中也、やだ、怖い！！』
「うるせぇ！！
手前ェの傷口消毒してやってんだ。喚くな」
睨まれて思わず黙る。
それを了承と取ったのか、彼はまた同じ動作を繰り返す。
鼓膜に届く水音。
時たま傷口以外も撫でる舌。
彼の、荒い息遣い。
ああ、まるで…
褥の中で愛されているようだ。
過った思考に顔が熱くなる。
『っ…！！』
小さく動いた中也の指に大げさに反応してしまった流華に、彼は深く笑む。
「なんだァ？
…もっと深く、消毒が必要か？」
もう色付いていた流華の頬が一層、紅くなる。
「流華」
熱を孕んだ中也の声が彼女を呼ぶ。
「手前ェを傷付けるのも、癒すのも、守るのも
全部、俺だ」
…他の奴になんか触らせんな。
艶やかな声が魔術めいて流華を首肯させる。
「約束、だからな」
『ん、約束』
立ち上がった中也と唇を合わせる。
自分の血の味がした。
それさえどうでもいいほど、流華はそれに溺れて。
そんな彼女の体を軽々抱き上げた中也の足は、自然寝室へ向かっていた。
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか！！！ありがとうございます！！Ｂダッシュで見に行きます！！ (2016年7月17日 10時) (
レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます！読んでいただけて嬉しいです！！先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします！！ (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです！！ハッピー方面で！！ (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます！先刻アップさせていただきましたのでご確認ください ！！ ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます！これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております！ (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちょこ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時：2016年6月14日 21時
