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急に腕が離されたかと思うとこっち振り返って「信じるかもね」とふにゃ、と笑った。
「そっかー！センラくん意外にそういうの信じる人だったんだね」
「…うん」
それから幽霊の話なんて忘れるくらい他愛もない話をした。生活のこととか友達の面白い話とか普段聞けないことばかりで身体全てが満たされる感覚があった。
「ここで、いいよ」
「あぁ…うん」
「じゃあね」
もうこんな時間ない。もっと話していたかった。やっぱり告白出来ない私はちっぽけで臆病な奴なのだ。
でも、もういいや。
全て満たされたから未練なんて何もない。
これで＿＿＿
「待ってや！」
視界が突然暗くなったかと思うとセンラくんの香りが鼻を刺激する。
センラくんに抱き締められてる。
柔軟剤の香りに思わず泣きそうになった。
「Aって幽霊やろ」
幽霊という言葉に息が出来ないくらい泣きそうに…いや涙が出た。
「…そんな…わけ、ない、じゃん」
「俺、実はな。未練残ってる幽霊、成仏させる役目しとんねん。分かる」
「ちが、うの。私は、高校3年生のAだよ」
「ほんまは高校2年生のハロウィンの日、事故あって幽霊なったんやろ」
「違う。違うよ」
「嘘つかんとって」
なんでバレてしまうのだろう。
何も言わないままお別れするつもりだったのに。
私は高校2年生のとき事故に遭って幽霊として人間界に留まってしまった。
ハロウィンの日に何故か戻っていて事故に遭ったことも何も無くなって普通の生活になっていたときは本当に驚いた。
最初は嬉しかった。
でも時が経つにつれて苦しくなった。
未練が解消されなければあっちの世界へ行けない。
じゃあ私の未練ってなに？
ハロウィンの日のことはまったく覚えていなくて。
でもこの日が来てようやく分かったの。
私が満たされるたった1つのもの。
「私の未練ってセンラくんにおれん、じ色のね。飴玉をもらう、ことだって」
「…そっか」
「その未練が達成されたから、もうお別れ」
もうさよなら。時間はあと2分。
体が透けていっている。
「Aごめん。気づいてやれんくて」
「もういいの」
「最後に言っていい？…俺ずっと…」
「言わないで」
言ったらお別れ出来ないから。
その先の言葉分かっちゃったら残りたくなる。
「ばいばい」
センラくん、ありがとう。
だいすき、でした。
翌日、彼女の机の上にはオレンジ色の飴玉が２つ置かれていた。
「A、忘れへん」
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