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行き着いた先は、誰も通らないであろう路地裏だった。
そいつの顔を見ると、リアルなゾンビの仮装をした紫髪の男の人だった。強そう。
「なんなんですか？」
「君、むちゃくちゃ甘い匂いするなぁと思った」
甘い匂い、という言葉に引っかかる。
…こいつ…もしかして？
いや、そんなわけが無い。ずっと上手くやってたはずだ。
「お菓子のことじゃないですか？はいこれ」
目的はお菓子だろう。半強制的に包装したお菓子を押し付ける。彼はそのお菓子を匂って、
「お前からや。これじゃない」
そんなわけがない。香水なんてつけないし、普段そんなことを言われることすら無い。せいぜいシャンプーの匂いがいいね、としか。
「知りません。あと嗅ぐのやめてもらえませんか？」
「おっかしーな」
考え込む彼。首から覗く生々しい傷に思わず背筋に悪寒が走る。
「あなた、リアルですね。仮装」
「仮装じゃない。ホンモノ。俺、マジのゾンビやねん」
…一瞬、何言っているかがよく分からなかった。ゾンビ？そんな人いるの？は？
「俺の手、触ってみ。体温ないから冷たいで」
恐る恐る触ってみるとヒンヤリとした感触が私の手を支配する。こんなの人間ではありえない。なら…彼の言っていることは本当？
「ま、信じんでもええよ…だって俺、君のこと今から食べるから」
食べる？たべる？タベル？
私を。彼が？
「甘い匂いするの珍しいし会ったことないしな。食べがいがするわ」
「ちょ、ちょ…ちょっと待ってください…」
どうしよう？まだハロウィンの魔法にかかっていたいの。親とか友達とかいるの。でもこいつに言ったって何も動じずに食べるだろう。怖い。
…あ。そうだ。
彼を今年の『ターゲット』にすれば。
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