不思議魔女っ子の異世界旅II (ページ5)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:454 hit

四十八話　初見朧よりページ5

長老は、

「地図はわしの部屋に保管してあるから、そこに案内しよう」

そうAたちに言った後、話していた付き人の方に体を向け、

「アキ、少し他のことを任せてもよいか？」

と尋ね、

「分かりました」

という付き人──アキの返事を聞いて、安堵したように頷いた。

「では、いくぞ」

と、右手の人差し指を上のほうに動かしたのを見た次の瞬間、Aの視界は真っ白になり、なんだか体が浮き上がっているような、そんな感覚がした。

それも刹那のことで、ふわっ、と着地した心地がして、白い世界は弾けて消えた。さっきまで館の廊下にいたのに、一瞬で見知らぬ部屋にいた。とても広く、たくさんの本や高価そうなものも見受けられる部屋。Aが困惑してあたりを見渡していると、

「フォッフォッフォッ。ここはわしの部屋じゃ」

と、気付いたら少し離れた書斎机のそばに、愉快そうに笑っている長老がいた。

「そういえば、二人にはまだ言っていなかったな。わしは、転移魔法の使い手なんじゃよ」

「え、そうなんですか！？すごいですね！」

長老の言葉に、マモルは驚嘆の声をあげる。しかし、この世界の魔法事情についてよく知らないAは、マモルの言うすごさが分からない。それに気が付いたのか、

「転移魔法っていうのは、この世界に何十兆と人やエルフ、獣や妖精がいる中で、二人か三人しか持っていない魔法なんだ！歴史で数えても、百人にも満たないんだ。コントロールが難しい魔法らしくて、扱いきれないこともよくあるみたい。だから、実際はもっといたかも、ってぐらいすごいんだ」

と、マモルが教えてくれた。そのことを聞いてAは、今までもすごいと思っていた長老が更にすごく見えて、後光が差しているかに思えた。

「まあ、わしの魔法の話は置いておいてじゃな、地図を見せよう。ほれ、こっちへ来なされ」

長老がそう言うので、Aたちは机のもとに集まる。それと同時に、長老は引き出しから古びた地図を取り出した。地図の上には、赤くばつ印が書かれているところが四つ。どうやら、事件はAたちがいたところを含め四か所で起きたらしい。

「場所は全部で四つじゃ。ここから北東にある都市『ノールデス』、遠い東にある織物が有名な都市『テッシュート』、西南西にある商人の都市『メルカンテ』、そしておぬしらが行った北西の都市『パルコディ』。コンパスとこの地図はおぬしらに渡しておく。どうか気をつけてな」

「「「「「はい！」」」」」