不思議魔女っ子の異世界旅II (ページ4)

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四十七話　杳覇よりページ4

「えーと……お二人さん」

　Aとマモルがハッとして顔を上げると、イチロウタとシロウが苦笑いでこちらを見ていた。アツヤに至っては今にも飛びかからんとばかりにギリギリと奥歯を鳴らし、二人を……主にマモルを睨んでいる。
　彼についてはむしろ飛びかからなかったことが奇跡かも知れない。

「わ、悪い！」

「ごめんなさい……」

　慌てて離れる二人に目を細め、シロウは大丈夫だよと言った。大丈夫じゃないのは隣の弟である。

「それで、この一件だけど」

　笑みから一変、イチロウタは真剣な顔になった。途端にその場の空気が張り詰める。先程までのフワフワした表情は誰の顔にも浮かんでいない。
　イチロウタは眉を顰め、神妙な表情で呟く。

「嫌な予感がするんだ……胸の辺りがザワつく」

「とにかく、一旦帰ろうぜ。この場は警察に任せればいい」

　アツヤの言葉に全員で頷いた。

　箒に乗った五人が空に舞う。
　イチロウタの感じた「嫌な予感」。それがどうか勘違いでありますようにと祈り、Aは杖を握る手に力を込めた。

「──長老！」

　付き人らしきエルフと話していた長老が振り返り、Aたちを見て目を見開いた。

「無事じゃったか。何よりじゃ」

「無事って……じゃああの騒動のこと、知っているんですね」

　長老は頷いて続ける。

「別の場所にいるエルフたちからも連絡があったんじゃ。どうやら各地で獣族の者たちが突然暴れ出しているらしいの」

「別のところでも！？」

　マモルが声を上げ、Aが小さな拳を握った。
　別の場所に行って怪我を負ったエルフたちが運ばれてきているらしく、屋敷の中は夜中にも関わらず騒がしかった。

　忙しなく出入りする仲間たち。その上、獣族とのハーフのエルフは隔離されているらしい。
　このままでは、獣族への差別意識が出てきてしまってもおかしくない。平和な集落の絆に亀裂が入る。

「解明しようにも、わしはこの家を守らにゃならん。他の者も手がいっぱいじゃ……そこで、お主らに頼みが」

「──俺たちが調べてきます！」

「！」

　長老の言葉を遮ってマモルが宣言した。隣にいるAも、イチロウタ、シロウ、アツヤも、迷いのない瞳をしている。

「俺たちが、騒動のあった場所を回って調べてきます」

「場所を地図にまとめてもらっていいですか？」

　目を見開いていた長老が、柔らかな表情になる。
　騒動の話が耳に入ってから初めての、長老の笑みだった。