不思議魔女っ子の異世界旅II (ページ3)

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四十六話　初見朧よりページ3

Aは次々と薬液を生み出し、負傷した人々のもとへと駆けつけた。別の方でもシロウが魔法で手当てをしてくれているが、それでもまだ終わりが見えないくらい数が多い。マモルとイチロウタとアツヤは懸命に獣族と戦っているが、こちらも数が多く、彼らが対応できない獣族は住民たちがなんとか止めている。そんな彼らの姿を見ているしかできないことが、Aはとても歯痒かった。両方できればいいのにと。

獣の咆哮。爆発音。崩れる建物の音。激しい風の音。子供の泣き声。Aはその中に、ほんの微かにマモルの痛そうな声が聞こえた気がした。Aがばっと上空を見ると、ぼんやりと怪我をした様子の彼が見えた。けれど、彼は依然としてその明るい光の如き凛々しさを失わず、聖者のような、救世主のような、神のような手で敵を薙ぎ払っていた。

「マモルくん……」

自然に声が出ていた。ああ、彼を助けにいきたい。何もかも放って、少しでも彼の力になってあげたい。住民たちより、彼のことが気がかりでしょうがない。Aはそう思う自分の頭を振り、住民の手当てに専念した。

灼熱の炎が、夜空を焦がしていく。空は、押し潰されるような紺から､優しく包んでいく桃色へと変わる。待ち望んだ払暁。地平線から覗く太陽は、一体どちらを照らすのか。

夜が明け、空も水色に染まりきるかという頃、音は止んだ。長い長い戦いの末、人々は地を鳴らすような歓声を上げた。青髪の少年は、いつしかいなくなっていた。うまく頭が働かず、Aが茫然としていると、肩をトントンと叩かれた。振り返ると、シロウがいた。

「よく頑張ったな。終わったぞ、A」

その一言で一気に実感が突き上げ、張り詰めていた気が抜けて思わずへたりこんでしまった。

「え、おい大丈夫か！？」

いきなりAがへたりこんだので、シロウは驚いてあたふたとしている。そんなシロウが面白くてAはクスッと笑い、

「うん、大丈夫」

と言って立ち上がった。そうしていると、何やら騒がしい聞き慣れた声がした。

「A、シロウ、大丈夫だったか！？」

獣族の応戦に出ていた三人組が、帰ってきたのだ。傷だらけで、ボロボロで、ずっと大変だっただろうに。気付けばAは、マモルの胸に飛びこんでいた。

「よかったあ……」

そう言ってAは、大粒の涙を流し始めた。最初はいきなりのことで当惑していたマモルだが、少しして、

「ありがとう」

とAの頭を撫でた。