いつもと変わらぬ日々を愛し続けられるのならば。/歌い手大型コラボ

幸福依存 Eve/千夜 ページ5

空を眺めた。

雲一つ無い、は言い過ぎかなってくらいの、それでも天気図に表すと快晴に分類されるくらいの、微妙な空。

そういや今日は、何もかも微妙だ。
目覚めも嫌いな兄に起こされた。
昼食に買った新発売の菓子パンが外れだった。
体育の授業で擦りむいた。

そんな小さな事でヒトは不幸を感じるのに、その分の幸せを感じただけじゃ、幸せだって思えない。


───欲張りね。



「A、それなに？」
「これ？日記。中学生の時に宿題で付けて、癖になったの」
「えっなんか凄い」



そういえば、彼はいつも幸せそうだ。
常に笑みを絶やすことなく、些細なことでも大袈裟に喜ぶ。

ちょっと嫌な事があっても、すぐに楽観的に捕らえては、また微笑む。
そんな対極な私達は、特にどちらからともなく引かれ合い、自然に付き合っている事になっていた。

周りに無関心というか、抜けてるというか、其れだけが私達二人の共通点かもしれない。


「ねぇ、いぶ」
「なぁに、A」
「、何にもないよ」
「……そう？」


必要ではないだろ、と周りによく言われるこのやり取りも、私達二人のルールの様なもの。
顔を合わせれば、名前を呼び合って、お終い。

いぶがどう思ってるかは分からないけれど、私は確認作業だと思っている。
愛の確認、とかそういうのじゃなくって、お互い、今日もちゃんといますよって。生きてますよって。

自分が何をしたいのか分からなくなり掛けた時、どこからともなくいぶは私の前にいる。私に存在意義を与えてくれているのかも。


《なんて、自分にしか得のない解釈》


結局は自分が可愛いんだ。
自分がよければ構わない。起こった不幸を解消するために、いぶを利用してるみたい。
第三者なら、最低って、気持ち悪いって、言えるのに。

自分に対しては言えやしない。



「……A」



低く、真剣な声音が耳元で囁いた。
その声がいぶの物だと分かるのに三秒、私の顔の前の影がいぶの顔だと分かるのに更に三秒。

唇に温もりを感じたのは、何秒後だっけ。


「責めちゃだめ。俺だって、大切だから」
「いぶ……？」
「自分が、大切だよ、一番。それでもさ、


一番が二つあっちゃ駄目なんてないでしょ」


私達は、同立。

目が冴えた瞬間の様に、流れてきた思考が、ごちゃごちゃの脳に突き刺さる。
いぶだって、同じ。
私を利用して、幸福を得てた。

なんでだろうね。
嬉しくて、泣いてしまいそうなの。

微妙、なんて掻き消す以上の幸福を味わった。
その幸福を堪能するように、もう一度唇を重ねた

Mad Love.　そらる / 睦月 。→←僕を癒してキスをして。まふまふ/めろんぱん

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