おかたづけ3 ページ18
カ「これがゴミ袋、あとあっちに掃除機……」
そう言いながら、足元にあった空のビニールプールにつまづいた佐藤さんがずぺっとコケる。
笑いが止まらない私にじっとりした視線を向けながら、体育座りの佐藤さんは「金縛るぞ」と呟いていた。
『あー……あーははは、すみません……』
立ち上がるどころか、ビニールプールに横になっている佐藤さんを見てまた笑いが込み上げる。
カ「わーらーわーなーいー」
大の字の佐藤さんがじたばたと手足を動かす。未だに笑う私を見て、ついに佐藤さんも笑い始めた。
私もビニールプールの脇にしゃがみこんだ。笑いすぎたせいで、いつも使わない腹筋と背筋がじんじん痛む。幸せな痛みだ。
カ「ねえ」
『なんですか……ふふっ』
ビニールプールの縁に遮られて、佐藤さんの顔は見えない。
カ「寛太でいいよ。佐藤さんって、なんかへんだから」
『変じゃないですよ。素敵ですよ』
カ「じゃあ素敵じゃない方で呼んで!」
ムキになった佐藤さんがそう叫ぶが、私は『どっちも素敵です』と返した。
知り合って間もないのに、こんなに話せるなんて不思議だ。
私の外側と佐藤さんの外側が、水彩画みたいにじんわり交じり合うのを感じる。
カ「ねーえ、ね、お願い」
ビニールプールから少し体を起こした愛玩動物こと佐藤さ……寛太さんがこちらを見る。
『……私の事も、Aって、呼んでくれるなら……』
カ「…………」
もちろん、図々しいお願いだ。でも「寛太さん」と呼ぶにはかなりの勇気が必要で、これくらいの交換条件がないと私には無理だった。
カ「……Aちゃん」
『はい。寛太さん』
カ「なんか照れる」
『照れますね』
カップルみたい。思っていたことは二人とも同じようだ。お互いにひとしきり照れ合ったあと、
『でも、これでお友達ですね』
カ「お友達です」
寛太さんが小指を突き出してきた。
カ「握手」
『はい』
寛太さんの小指を握る。
『握りづらいです』
カ「友達なら我慢して」
くすくす、お腹が痛くなるくらい静かに笑う。
寛太さんが部屋に帰ってからも、気付くとにへらぁとだらしなく笑ってしまい、きゅっと口をすぼめるのにかなり気を使った。
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おまけサブカメラ。「おかたづけ3 カンタカメラ」
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どすこい(プロフ) - みりん.さん» うわああ空気を感じて欲しくて書いてるのでほんと!ほんと!冥利に尽きまくっています!ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年9月11日 9時) (レス) id: 0b133baffd (このIDを非表示/違反報告)
みりん.(プロフ) - 初めまして!文才が光り輝いてます憧れです…!富永さんもカンタもPさんも後輩たちも皆キャラが立ってて、脳内再生余裕でした…!!応援しています、!! (2019年9月11日 9時) (レス) id: 76a5e800b1 (このIDを非表示/違反報告)
どすこい(プロフ) - りかさん» 深夜とかに更新して申し訳ないです、ありがとうございます!がんばりまし!! (2019年9月8日 2時) (レス) id: 0b133baffd (このIDを非表示/違反報告)
りか(プロフ) - 更新されるとすぐ読んじゃうくらいハマってます!これからも更新頑張って下さい! (2019年9月8日 1時) (レス) id: 06319c03d9 (このIDを非表示/違反報告)
どすこい(プロフ) - ウユさん» おアッ……ありがとうございます……コメントすごく嬉しいです、気長にお待ちください! (2019年9月5日 22時) (レス) id: 0b133baffd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どすこい | 作成日時:2019年8月30日 1時