MV 1 ページ11
イヤホンの外側がざわざわとうるさいことに気がついた。
少し手を止めて、右側のイヤホンだけを外してみる。
ト「めんどくせーお前!!」
カ「ちょっとまじで静かにして!ねーえ!!」
階段を見上げると、富永さんがもう1人の男の人と談笑しているのが目に入った。談笑どころか談爆笑だが。
車の中で見た怖い人とはまるで違うんだ。車の中では怖くて硬そうだったけど、今の富永さんはなんだかふわふわと柔らかそう。
「あはは」とか「わはは」って笑う人は多いけど、「めんどくせー」って笑う人は初めて見たな、とかもちょっと思った。
ト「カンタ、後ろ向いてみ……!」
富永さんが、イヤホンを外す私を指さし、またイヒヒー!と笑う。
カ「えっ?おわっ!」
気づかれた、とばかりに仰け反り、富永さんを押し退けて階段を駆け上がろうとする「カンタ」。富永さんはそれを太い腕で妨害し、楽しそうに「カンタ」を下へ追いやる。
ト「丁度いいから自己紹介しちゃえよー」
イヒヒー!からヒィ〜…くらいに落ち着いた富永さんが「カンタ」の肩を掴んで私の前に並ぶ。
「カンタ」は落ち着きなく目を逸らし、気まずそうな笑みを浮かべたりしていた。
カ「カ、カンタです、佐藤寛太。よろしくお願いします」
ト「お前絶対カッコつけんなよ?カッコつけて無愛想になるネタいらねえから」
佐藤さんの生真面目さを、富永さんが上手くフォローする。
佐藤さんは私の目を見ずに長い前髪を払って、またニヤっと照れたように笑う。女の人に慣れていないのかな、とか思った。それはお互い様だ。
『AAです。よろしくお願いします』
カ「はい。…………えっと、何聞いてたの」
富永さんからの「もっと喋れや」という視線を受けて、佐藤さんが私のイヤホンを指さす。
『これ、ご存知かどうか……室井雅也さんって、人の、ヒロインは君でって……いう……』
その場の雰囲気が少し止まる。
101人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
どすこい(プロフ) - みりん.さん» うわああ空気を感じて欲しくて書いてるのでほんと!ほんと!冥利に尽きまくっています!ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年9月11日 9時) (レス) id: 0b133baffd (このIDを非表示/違反報告)
みりん.(プロフ) - 初めまして!文才が光り輝いてます憧れです…!富永さんもカンタもPさんも後輩たちも皆キャラが立ってて、脳内再生余裕でした…!!応援しています、!! (2019年9月11日 9時) (レス) id: 76a5e800b1 (このIDを非表示/違反報告)
どすこい(プロフ) - りかさん» 深夜とかに更新して申し訳ないです、ありがとうございます!がんばりまし!! (2019年9月8日 2時) (レス) id: 0b133baffd (このIDを非表示/違反報告)
りか(プロフ) - 更新されるとすぐ読んじゃうくらいハマってます!これからも更新頑張って下さい! (2019年9月8日 1時) (レス) id: 06319c03d9 (このIDを非表示/違反報告)
どすこい(プロフ) - ウユさん» おアッ……ありがとうございます……コメントすごく嬉しいです、気長にお待ちください! (2019年9月5日 22時) (レス) id: 0b133baffd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:どすこい | 作成日時:2019年8月30日 1時