第68話 見えてきた狂気 ４（日向視点） ページ33
あれ？
俺、何してたっけ。
文化祭が終わって、打ち上げをして…
菫が写真撮ろうって言って…
俺がカメラを取りに行こうとした時楓君が…
ん？楓君はどこに…と思ったら、俺は温もりのある何かを覆っている事に気付いた。
―――まさか…
少しだけ体を起こすと、楓君がぽかんとした表情で俺を見上げていた。
「か、か…楓君!?」
「…あ、えーっと…」
楓君が、仰向けで倒れている。
つまりこの体制は…俺は、楓君を押し倒し……!?
「わ…わああ!?楓君を押し倒すなんて……何て事を!!楓君違うからね!?
俺はその、人を襲う趣味はないんだ!!本当なんだ!!」
「い、いや大丈夫!!分かったから十分!!そもそもそんな趣味持ってたら怖いからね？」
ど、どうしよう。
絶対楓君ファンに怒られる…殺される!!
っていうか、桜と柊君が一番怒るよね!?!?
むしろ殺されてもおかしくない!!
柊君は絶対に「俺の兄に何て事を…許すまじ」とか言いそうだ、多分ね!!
「楓君、この事はご内密に!!」
「わ、分かったから。とりあえずその…落ち着いて、ね？」
あぁ…俺何て事を…
「それより、カメラだよ。後三脚も。」
楓君がテキパキと動いて、すぐに部室を出た。
うん？
あれ、俺いつ部室に入ったっけ？
「ほら、早くしないとフルーツサンド全部桜に食べられちゃうよ。」
「あ、そうだった!!早く行かなきゃ!!」
「あ、帰ってきた!!」
「お帰り!!ありがとうね!!」
その後、皆で写真を何枚か撮り、少ししてパーティーはお開きとなった。
ようやくメイド服から解放される…。
「あ、日向。」
桜が俺に綺麗な白い箱を渡す。何だ？
「竹貫先生からお土産。」
中を開けると…色とりどりのフルーツサンドだった。
「え、コレどうしたの!?」
「竹貫先生、私達ががっつくのを見て…2人が部室に行っている間に作ってくれたんだ。私は打ち上げで一杯食べたし、日向食べていいよ。」
そういえば、俺結局4つしか食べてないや。
けど…
「じゃあさ、コレは明日のおやつって事で。」
「うん、そうしなよ!!」
「いや、桜も。」
「え？」
「こういうのは1人よりも複数の方がいいっしょ？…それに食べきれないし。」
おお、桜の目が泳いだ。動揺している。心が揺らいでいる。
「だから桜、明日のおやつの時間付き合って。いいね？」
「…うん、付き合うよ!!」
「水樹お兄ちゃん、目笑ってないよ…」
「…気のせいだ。」
こうして、文化祭は幕を閉じたのであった。
第69話 兄が家事をこなす理由 １（水樹視点）→←第67話 見えてきた狂気 ３
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作者名：tsurara | 作成日時：2017年3月5日 20時
